和菓子に珈琲という挑戦。
夏の限定メニューのあんみつ(1,700円 珈琲付き)
次に、和菓子屋さんとしての新しい取り組みについて聞いていきます。
ほとゼロ:出店するにあたって、挑戦とか意味とか考えてらっしゃることはありますか?
森藤:一番大きいのは和菓子と珈琲を合わせたことですね。全国探せば新ジャンルとしてあると思うんですけど、これだけの値段で和菓子に対して珈琲だけを合わせるのはある意味チャレンジですね。
ほとゼロ:そうですよね。
森藤:あの、ふだん珈琲飲みます?
ほとゼロ:飲みます。
森藤:1日1杯ぐらい飲みます?
ほとゼロ:飲みますね。はい。
森藤:日本茶って今あまり飲まないんですよね。
ほとゼロ:確かに…。
森藤:それだけ日本人が好きな珈琲と和菓子が合わない…ってことはないと思うんです。ただ合わすにはどうしたらいいかっていうのを考えていなかっただけかなと思います。僕らはくろぎという料理屋が主体ですので、和菓子が珈琲に合わせるのではなく、少なからず和菓子があったうえで、珈琲をどういう味に持ってくるかっていうのをすごく勉強して研究しました。
ほとゼロ:はい。
森藤:そんな中で、僕らも珈琲は無知だったので、誰か意見をいただける方がいないかと探していた時に、猿田彦珈琲の大塚さんと出会いました。最終的に出てきたのが和菓子に合ったブレンドの珈琲です。
ほとゼロ:そうなんですね。お客さんの反応はどうですか?
森藤:この2つをお客さんにどう説明するか、はじめはとても難しかったです。和菓子に珈琲なの?っていうリアクションはオープン当初からずっとありました。ただやっぱり、試してもらうと、合うね~!と言われます。たとえば、あんぱんに牛乳っていう組み合わせって黄金ですよね。
ほとゼロ:私も好きです(笑)。
森藤:だから、あんこにカフェラテって合わなくないと思うんですよ、とご説明して、おはぎをご注文されるお客様がいらしたら、カフェラテを合わせてみてはいかがですか?というように、こちらからのアプローチで分かってもらえたりします。
ほとゼロ:お話を聞いていて、お酒とお料理を合わせるように、今、和菓子と珈琲で取り組んでらっしゃるのかなと思いました。
森藤:まさにそうですね。この料理にはこのワインが良い、とか言いますけど、それが本当に合っているのか分かる方はかなり限られた人たちだと思います。そうではなくて、やっぱり今では和菓子と珈琲って庶民の味なので、分かりやすくしてあげないと、とは思っています。
ほとゼロ:説明を聞くとすごくおもしろいし納得できるんですけど、やっぱり最初は戸惑うかもしれませんね。
森藤:そこですよね。あとはやっぱり、東京大学と日本を代表する隈先生という建築家、日本を代表するハウスメーカーが携わった建物なので、日本一の大学の建築物を建てる、というテーマがあると思うんですね。その中にある僕らのお店は、日本一の店舗でなくてはならないというちょっとしたプレッシャーもあったりしました。
ほとゼロ:はい。
森藤:立地も別に良いとは言えないと思うんですよ。その中でこの価格帯で和菓子屋さんをやるのは、認知されるかなとすごく不安でしたね。今は土日の午前中はゆったりで、昼過ぎからずっと満席が続くような状態になるんですけど、この1年で少なからず認知していただいているのはうれしいことだなと思っています。
ほとゼロ:それはすごいです…。どのような方がお使いですか?
森藤:こちら側は大学院が多いんですが、はるばる弥生キャンパス側から来ていただく学生さんもいたりと、常に東大生に足を運んでいただいております。やっぱり東京大学の院生となると社会人との関わりもあるようで、さすがに打合せでファストフードや珈琲チェーン店とかには行きづらいようです。
ほとゼロ:ですよね。
森藤:やっぱりこういうところで資料を広げてお話ができるっていう、そういうステージとして使っていただいているというのはあります。
ほとゼロ:喜んでいただけますよね。
森藤:そうですね。さすが東大さんだなと思ったのは、最近の学生さんはチョコレートや洋菓子がムーブメントでそういう年頃だと思うんですけど、小さな頃から茶道をされている方もたくさんいらっしゃるようです。
ほとゼロ:…すごいですね。
森藤:そうですね。あと研究心が高い人たちなので、あんこの炊き方ひとつにしてもどうやって炊くんですかとか聞かれるので、これはこうやって炊いて、最後に少しお醤油を入れてあげるとおいしいですよと伝えると、なるほど、と塩と甘さの相乗効果があることも理解して、だからおいしいんだ、と納得されます。
ほとゼロ:おもしろいですね。
森藤:だから、夏限定とか冬限定ってメニューが変わるたびに、これ出たんだ、じゃあ食べようと来てくれる学生さんが多いです。
ほとゼロ:良いですね、関係性がすごく。
森藤:見えなかったことなんですけど、そういう需要があった土地柄だったんだなと気づきました。和菓子屋さんが比較的多くて、また学生と文豪の町だったので喫茶店もすごく多いですしね。
ほとゼロ:土地柄に合っていて、いろいろ組み合わせたスタイルのお店が増えていきそうですね。
森藤:和菓子屋さんだけじゃなく、料理屋さんでもそういうのが見えはじめてきていますね。合わせてみたらおいしかったっていうのはたくさんあると思います。
(後編はこちら)