ネコは物理法則を理解している、というなんとも驚きの発表。前編(こちら)では今回発表された論文の筆者である高木佐保さん(京都大学 文学研究科 博士課程)に、今回の発表にたどりつくまでの過程となった実験1、2の中身をお聞きしてきました。
後編では論文の中心となった実験3「ネコに手品をみせる」の中身と、今後の展望を語っていただきました。
ネコに手品を披露…?
実験1、2と条件の異なる筒でネコの反応を確かめてきた高木さん。
次なる実験3では、ネコに手品を披露。一体どういうことなのでしょうか。
実験3
実験3では27体のイエネコが被験体に。この実験のために作られた装置を利用して、実験を進めていきます。
実際に使用された装置。写真左が上段、右が下段になっています
こちらの装置、元はお弁当箱だったそうです。お弁当箱を実験装置にしてしまう発想がすごいですよね…。
お弁当箱の下段の側部にはスイッチがついており、それを押すと電流が流れ、上段と下段の真ん中についている電磁石が磁力を帯びるという仕組み。
スイッチが入っている間は上段のステンレス板にパチンコ玉が磁力でひっついており、装置を振っても音がならず、ひっくり返しても落ちてくることがありません。スイッチが切れている間は、音が鳴りひっくり返せばパチンコ玉は落ちてきます。
実験は以下の手順を踏んで行っていきます。
①箱を振る。
②箱をひっくり返す。
③箱を置き、ネコに自由に探索行動できる時間を与える。
箱を振る・ひっくり返す際の条件は全部で4つ。
赤字の「ありなし条件」「なしあり条件」が期待違反(期待する行動とは違うことが起きること=手品)の条件となります。
さて、ネコはどのような反応を見せたのでしょうか。
実験に協力中のネコ。じっと見ていますね
結果は以下となりました。
実験1、2で疑問となったvisual preference(音と動きが同期したものを見つめてしまう反射のような行動)については、箱をひっくり返したときに反応があったことから、音と動きの同期性にだけ反応しているわけではないとし、visual preferenceでは説明できないとの結果に。
また、ありあり条件とありなし条件では有意差が見られませんでしたが、ありなし条件・なしあり条件の間では有意差が生じています。このことからネコは音と動きの同期性から物体(パチンコ玉)の存在と落下を予測していたと考えることができます。
つまり! ネコは
・「振ると音がする」→「なにかある!」
・「振って音がしたものをひっくりかえす」→「なにか落ちてくる!」
と考えることができているというわけです。
ネコの行動や心理にはまだまだ未解明な部分がたくさんあり、研究が始まったのはごく最近だといいます。それはイヌとは違い、エサが報酬として働きにくいこと、またデリケートな部分があるため普段の環境と異なる場では実験にならないため、実験を行うこと自体が難しいからとされています。
そんな中で、今回の発表は世界中に衝撃を与えました。高木さんのもとには世界各国から取材の依頼が来たそうです。
「ネコはなにか考えているな、と感じたところからスタートし、今回このような検証結果をだすことができました。今後はネコがどこまで聴覚から得る情報で理解しているのか、例えば物質の素材や重さ、人物を特定しているのか、そんなことを研究してつきとめていきたいです。」
高木さんは、今後の展望をそう語ってくれました。
身近なネコの新たな一面が分かる日がもうすぐ来るかもしれません。ネコ好きとしては、とっても楽しみですね。
ご協力くださる飼い主さま募集!
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京都大学院 文学研究科
心理学教室 藤田研究室 CAMP-NYAN
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