ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2015.11.9
  • author:人見真紀

古典とあなどるなかれ。息を飲む明大のシェイクスピア演劇!(準備編)

2014年ゲネ2

※写真は2014年度公演の様子


シェイクスピアといえば、古典演劇の代表格。古典と聞くと「ちょっと、とっつきにくい」…という印象をうける人も多いでしょう。にも関わらず、昨年の動員数がなんと驚きの約3,800人! いったい何故? その魅力を、明治大学シェイクスピアプロジェクトの秘密を探りにいってきた。

今年で12年目を迎える公演

お話を伺ったのは、明治大学シェイクスピアプロジェクト(以下、MSP)のコーディネーター井上准教授(文学部)と、スタッフ・キャストの皆さん。10月取材当日、この日も4時間以上にもおよぶ熱のこもった通し稽古が行われていたが、疲れを感じさせない明るさで取材に応じてくれた。

MSPに参加する約140人は、井上准教授が担当するシェイクスピアに関する講義を受講しているか、過去に講義を受講した学生がほとんどである。さらに現行のカリキュラムでは受講登録すれば単位も所得できる。しかし、大半の学生は有志で参加している。

「MSPは、2004年からスタートし、今年で12年目を迎えます。翻訳台本の制作から、キャストの選定、演出、舞台美術、広報まで全てを学生が行っています」と井上准教授。
演劇の経験がない学生が多いが、プロの指導も受けながら、完成度を高めているという。今年は中世イングランドの内乱を描いた『薔薇戦争』を、第一部「ヘンリー六世」第二部「リチャード三世」の2部構成で公演する。
2014年ゲネ12014年ゲネ3

2014年度公演

今年、稽古前のウォーミングアップ風景

今年、稽古前のウォーミングアップ風景

コーディネーター井上准教授

コーディネーター井上准教授

 

学生ならではの“言葉選び”が光る

シェイクスピアほか古典演劇では、演劇の世界独特の言い回しや古い言葉があふれている。そうした言葉づかいは、古典独自の特色として良い面もある一方で、とっつきにくい印象につながってしまうことも事実。MSPでは、学生翻訳チームのコラプターズが中心となり学生が原文を翻訳してセリフを考えているため、「ビビッてる」「ギャラ」といった古典にはない言葉も飛び出す。

「現代的な言葉使いがMPSならでは。見てくださる観客に自然と“落ちる”演劇になってほしいです」と話してくれたのは、プロデューサーの大野さん(文学部2年生)。

さらに、驚くほどかっこいいセリフも多い。大野さんに劇中で好きなセリフを聞くと、「別れは心をむしばむけれど、死に至る傷は癒してくれる」という、第一部「ヘンリー六世」に登場するマーガレットの言葉だった。実はこのセリフは、一緒に取材を受けていた演出助手の田所さん(文学部3年生)が翻訳案を出したものとか。学生がつくる台本、と侮るなかれ。シャイクスピアの世界を分かりやすく、かつ学生の感性を交えて見事に表現している。

4月からミーティングを何度も繰り返した

4月からミーティングを何度も繰り返した

右がプロデューサーの大野さん、左が演出助手の田所さん

右がプロデューサーの大野さん、左が演出助手の田所さん

 

個性がありすぎるキャラクター

今年の演目『薔薇戦争』では、バタバタと人が亡くなっていくし、主人公はかっこいい人でも良い人でもない。それでも、観客を引き込むような世界観がある。

永野さん(文学部3年生)は、自身が演じる第一部「ヘンリー六世」マーガレット役について「見方を変えれば、悪役とも取れる人。でも運命に翻弄されながら立ち向かう強さを感じる」と説明してくれた。
マーガレットは王妃ながら戦地に赴き、気弱な夫に代わって敵を殺める。劇中で人を殺める女性貴族はマーガレットだけ。地位・名声・幸せを掴もうと、悪になって目的を実現していく強さは、第二部の主人公リチャード三世にも共通している。

30人以上のキャストが登場する『薔薇戦争』では、悪い人、ダメな人、とことん悲劇な人と、ネガティブな役どころが多いが、どの人も個性が強い。演者が役の個性を上手に表現しているのか、印象に残るキャラクターが多いのだ。本公演ではどんな演技を見せてくれるのか期待が膨らむ。

マーガレット役の永野さん

マーガレット役の永野さん

本格的な稽古は8月から始まった

本格的な稽古は8月から始まった

 

衣裳は約150着! 中世の世界を手づくりで

衣裳もデザイン画制作から、縫製まで学生が担当している。衣裳担当の市川さん(文学部3年生)は「一着一着を丁寧につくりながら、全体的に統一感あるデザインに仕上げるよう心がけています」。衣裳の統一感をはかることで、劇中通して、中世の世界を形づくっているよう努めているそうだ。

「ほぼフルキャストが登場するオープニングの群衆ダンスが圧巻です」と見どころを紹介してくれたのは、プロデューサー補佐の清水さん(政治経済学部4年生)。これは個性豊かな衣裳を身にまとまったキャストが舞台で入り混じってダンスするシーンだとか。
演出の大野さんは「カオスのようなダンスシーンをつくることで、様々な人たちの想いが交錯する歴史劇を表現したかったんです」と語る。

右が衣裳担当の市川さん、左がプロデューサー補佐の清水さん

右が衣裳担当の市川さん、左がプロデューサー補佐の清水さん

衣裳部の制作風景

衣裳部の制作風景

約140人ものスタッフ・キャスト

約140人ものスタッフ・キャスト


「舞台、美術、音響、それぞれの役割で担当の学生が頑張っている。頑張って、頑張って、頑張った上で、良いものをつくってくれたと感じる」と井上准教授は、今年の手ごたえについて話す。現在公開中の予告編のプレビューも必見! このプレビューも広報担当の学生が制作している。予告編を見るとますます公演当日が楽しみになる。公演の様子は、次回(本番編)でご紹介します!

 


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