ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

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  • date:2020.7.1
  • author:南 ゆかり

【勉強会代替企画】学生・生徒たちが主役のオンラインコミュニティづくり。立命館大学「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」

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ほとんど0円大学では、2019年から大学の魅力的な広報活動を紹介する大学関係者向け「勉強会」を行ってきました(第1回目はこちら、第2回目はこちら)。2020年度前期は、新型コロナウィルス蔓延により開催を断念した代わりに「大学のリアルを伝える、バーチャル体験」をテーマに4つの大学の取り組みをウェブ取材し、レポートにして紹介することにしました。今回は、その第2回目、立命館大学の「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」です。大学関係者のみならず、一般の方にも興味深い内容になっていますので、ぜひご一読ください。

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紹介する取り組み

Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)

Beyond COVID-19は、立命館大学をはじめ学校法人立命館に所属する学生・生徒・児童・教職員のためのオンラインコミュニティの場として、新型コロナウィルス蔓延を機に、2020年4月に開設された。オンライン上の講座やプロジェクトを立ち上げるオーナーやその運営サポートを行うサポーターを学園から広く募集し、企画から運営までを一貫して経験しながら何かやりたいという気持ちを育て、実践する機会を提供する。本特設サイトでは、これら学園関係者による講座、プロジェクトを受講できるほか、大学提供のオンライン講座も楽しむことができる。

◎Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ) https://r-rimix.com/covid19/

教えてくれる人

冨田沙樹さん 学校法人立命館 立命館SDGs推進本部RIMIX事務局

北元柊人さん Sustainable Week実行委員会/立命館大学政策科学部2回生

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学びやキャリアを考えるきっかけになる、学生自身が熱中できる体験を。

― 「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」は、単にオンラインコミュニティの場というだけでなく、学生や生徒でもプロジェクトを立ち上げられるというのがユニークだと感じました。どのような経緯でこのような場づくりをはじめられたのでしょうか。

冨田 私は、2019年9月にスタートした、社会起業家育成プラットフォーム「RIMIX」の担当をしています。RIMIXは、立命館学園内で展開しているSDGs達成の担い手を育む実践的な教育プログラムをつなげ、ビジネスを通じて社会課題を解決する人材・社会起業家を育成することをめざすプラットフォームです。2020年4月から新しい取り組みをスタートさせる準備を整え学生に広報しようとしていた矢先に、新型コロナウィルスの感染拡大により緊急事態宣言が出され、4月8日から立命館大学は休講、キャンパスにも入構できなくなりました。オンライン授業の準備もすぐには整わず、学びを提供できない事態です。特に気になっていたのは、新入生のことでした。登校できない、友だちもできない、先生との関係もつくれない。RIMIXとして何かしなければという思いに駆られ、学びを止めないために今できることは何かを考えはじめたのです。

 

4月10日にはビヨンド・コロナプロジェクトを発足させ、手はじめに13日から学生にアンケートを取りはじめました。今何をしているのか、何に困っているのか、何がしたいのかを中心に聞いていくと、一番困っているのは人に会えないことであり、人と話したいといったコミュニケーションのニーズが高いことがわかりました。また、何をしているかという質問に、ただただ寝ているといった答えもあり、この時点では、自粛という事態にまだ対応できていない学生たちの姿が浮かび上がりました。

 

こうした結果を参考に事務局で話し合い、ステイホームの間に何か自分で熱中できることを見つけ実行する場を提供し、大学での学びや、人生のキャリアを考えるもとになるような体験をしてもらうことにしました。まとまった時間が取れる今だから、そしてオンラインだからこそできることをやってみることで、これからの生活の変化にも対応できる術を身につけてほしいという思いもありました。自分が何かを人に提供する側になる経験が大切だと思い、学生や生徒自身にプロジェクトを立ち上げてもらうことにしました。とにかくスピード優先で取り組み、4月16日には特設サイトを公開しました。

ビヨンド・コロナプロジェクト

プロジェクト発足後、わずか6日間で「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」の特設サイトをオープンした

学生のやる気にとことん付き合い、ゼロからの立ち上げをサポート。

― 学生や生徒はどのようにしてプロジェクトを立ち上げ、実行していくのでしょうか。

冨田 応募してくれた人にはまずオンライン面談をして、どういうことをやりたいのかなどを聞いていきます。オーナーと呼んでいるプロジェクトを立ち上げる人以外にも、オンラインでの講座やプロジェクトの運営をサポートするサポーターも募集しましたが、サポーターで応募してきた人も結構やりたいことを持っていました。こちらとしてはできれば自分で立ち上げるのを経験してほしいので、「オーナーになれば?」などと薦めてしまい、結局、ほとんどがオーナーとして所属しています。

 

それぞれの企画はRIMIX事務局のメンバー4~6人でアドバイスをしながら完成までをサポートします。見通しがついてきたら企画書のフォームに従ってまとめてもらい、完成度を見てサイトに掲載しプロジェクトが立ち上がるという流れです。単にこちら側から働きかけるだけでなく、オーナー全員が集まれるオンライン上のコミュニティを用意して交流できるようにしているので、互いに刺激し合って成長していく様子もみられます。また、関係がありそうなプロジェクトの学生同士をつなぎ、一緒に新たなプロジェクトを運営してもらったりもしています。

「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」の運用フロー

「Beyond COVID-19(ビヨンド・コロナ)」の運用フロー

 

― 学生さんたち自身のモチベーションがある程度高いから、うまく回っていくという側面もありそうですね。

冨田 確かに、そのような学生が集まってくれたという感じはします。私たちの支援やオーナー同士の話し合いなどには、チャットアプリのSlackやミーティングアプリのZoomを活用していますが、授業がない期間だったこともあり、エネルギーのある学生さんたちのオンライン上のやりとりには土日も深夜もありません(笑)。そういう場になるべく一緒にいてレスポンスを返していくことも、コミュニティづくりには必要だと感じました。もちろん、できるところまで、という感じではありますが(笑)。

 

現在までに85人強の学生・生徒が参加してくれています。できれば100人ぐらいまで増えてほしいですが、その一方で、そこまで増えるとフォローの手が回らなくなる可能性もあります。今後は、仲間同士で教え合い、高め合う、ピアチャレンジへのシフトが進んでいきそうです。

 

 

― 学生主導のプロジェクトというと事前に、さまざまなリスクを想定して及び腰になりがちですが、そのあたりは、どのようにお考えになったのでしょうか。

冨田 いろいろなことが起こるかもしれないけれど、それは腰を据えて面倒を見よう、という覚悟をもって臨んだというか(笑)。ふたを開けてみると、手を挙げてくれた学生や生徒はバランスの取れた人ばかりで、特に問題もなく進んでいます。

冨田さん

ウェブ会議アプリ「Zoom」を使ってやりとりをする冨田さん(左)

やってみたら意外にできる。オンラインが背中を押してくれた。

― 実際にプロジェクトを立ち上げた学生オーナーとして北元さんにお話をうかがいます。どのようなプロジェクトを実施したのですか。

北元 立命館大学Sustainable week実行委員会(以下SW委員会)として5月1日から6日までのゴールデンウィークに行った「Sustainable Week Live」です。SW委員会はSDGs活動の普及やリーダー養成などを目的に活動する学生団体で、毎年、秋冬にびわこ・くさつキャンパスで開く「Sustainable Week」をはじめ、他団体や企業と共同してSDGsに関連するイベントを行っています。こうしたオフラインのイベント経験やそれによってできたコネクションを生かしながら、何かインパクトのあることができないかと考えてビヨンド・コロナに応募しました。

企画にあたってまず考えたのは、物理的な距離の関係ないオンラインイベントだからこそ、いろいろな人に見に来てほしいということでした。冨田さんたちRIMIXの方々や先輩などにいただいたアドバイスも参考にしながら、次第に、幅広い人が自分の関心にしたがって選んで見に行けるようなライブという方向に固まってきました。自分たちで立てた企画に、これまでの活動でつながりのある団体や個人の方のご協力で発信していただく企画を組み合わせてバリエーションを増やし、全部で22企画を実施することにしました。

 

参加してほしい層として特に意識したのが、新入生や高校生など、まだアクションを起こせていないけれど、何かやってみたいとうずうずしている人たちです。彼らに気軽に参加してもらい、こんなことができると知ってもらいたかったので、若い世代に身近で、運営側も見る側も簡単に利用できるYou Tube Liveを選びました。Zoomも便利なツールですが、顔や名前を出して参加し、ライブの間中ずっと拘束されるのは少しハードルが高い。視聴するだけなら、もっと気軽にできるYou Tube Liveのほうがいいと考えました。質問したければチャット欄に書き込めるし、10分だけ見る、といった使い方もできます。

北本さん

「Sustainable Week Live」としてオンライン上で22の企画を実施。北本さんはその責任者として活躍した

 

― なるほど。学生さんならではの視点ですね。22企画のうちで、とくに人気だった企画を教えてください。

北元 一つは、立命館総長と学生が「ビヨンドコロナ後の大学生とキャリア」をテーマにディスカッションする企画です。仲谷総長の出演に話題性があり、学生も1回生、2回生の僕、4回生の2人と幅広い学年が参加して面白い内容になりました。視聴者のアンケートでは、ビヨンド・コロナのような活動をしている学生がいることを知って勇気をもらったとか、総長の考えを聞けて励みになったという声が多く寄せられました。

 

もう一つは、「誰一人取り残されない世界の実現のために」と題した講演企画です。立命館大学新聞の学生記者と無国籍ネットワークユースという早稲田大学のボランティアサークルに所属する学生の2人が、ロヒンギャ難民などの取材を行った経験から考えたことを話してくれました。重い内容で、お昼の12時からという時間帯がミスマッチかと思ったのですが、学生が実際に経験したエピソードにはとてもインパクトがあり、思わず聞き入ってしまうような内容。この番組が視聴回数274回で、22企画中でトップになりました。

 

―  プロジェクトを経験してみて、何か感じたことはありますか。

北元 僕はこれまで自分で行動を起こすことがあまりなかったのですが、この経験を通じて、やってみたら意外とできるんだ、と思えました。僕自身SW委員会に所属したのは3月のことで、今回のプロジェクトを一緒に運営した人たちとはオンラインで話すだけで直接会うことなく企画をまとめたのですが、オンラインだけで成立することにも驚きました。

 

また、「ビヨンド・コロナ」のしっかりしたホームページがありSNSも動いていたことで、参加するうえで安心感がありました。運営されている職員や関係者の方々に「協力してください」と言いやすい点でも、飛び込みやすいプラットフォームだと感じています。

 

冨田 その点については、オンラインサービスに手馴れている人たちのおかげというか、重要性を改めて実感しましたね。アップした情報をすぐSNSに流すなど運用の工夫をしたり、オンライン周辺のことが得意な若い世代との協働によってずいぶん助けられ、より効果的な発信ができました。北元くんたち学生もやりたいことに最適な発信ツールを考えてくれましたし、大学でオンラインサービスのようなものに取り組む際に、当事者の学生世代抜きで進めるのはナンセンスだと思います。

 

もう一つよかったのは、私たち現場がある程度まで判断を任せられていたことです。RIMIXは部署横断的のプロジェクトで私を含めた職員に加えて、外部で活躍している卒業生や学生もチームメンバーにおり、さまざまな試みを比較的自由にやらせてもらっています。通常の大学業務では会議による決裁などでスローになりがちなプロセスを省略しチーム内でほぼ完結できる形で進められたので、スピーディに展開することができました。

社会課題の解決に挑戦する学生を育てる、コミュニティとしてさらに活性化。

― 「ビヨンド・コロナ」はこれからどうなっていくのでしょうか。

冨田 「ビヨンド・コロナ」は、RIMIXという社会起業家育成プラットフォームから派生したいわゆる積極層の学生たちの活動コミュニティをつくる取り組みなので、どこかでRIMIX本体の活動と合流させ、RIMIXをさらに活性化させていこうとを考えています。ここで出会えた学生や生徒たちには、次のステップとして、社会課題をビジネスの視点を持ちながら解決する、という方向に進んでいける仕掛けの構築を、急ピッチで進め、実施しています。

 

北元 僕たちのオンラインでの活動は、ゴールデンウィークのライブ後も定期的に進めていますので、皆さんにぜひのぞきにきてほしいです。

ダミー

立命館大学 Sustainable Week 実行委員会では定期的にオンラインイベントを開催h。詳しくは、公式Youtubeチャンネルをチェック

 

― では、アフターコロナについても少しお考えを聞かせてください。「ビヨンド・コロナ」の経験から、何か見えてきたものがあるでしょうか。

冨田 今後の世界は読めませんが、少なくとも、ますますオンライン化が進んでいくことは確実だと思います。今回の経験で、社会起業家育成のプログラムについてもオンラインで結構やれる、という手ごたえを感じました。立命館は全国各地に学校があり、そのすべてを対象にした進め方のヒントになりました。一方で、コロナとは関係なく、知識を一方的に伝授する形の学習は今後、無くなっていく傾向にあると思います。そこでは、何かに集中し自分でプロジェクトを立てて実行していくような経験ができる環境を、学校がいかに多くつくれるかが重要になってくると思います。オンラインをうまく使って、こうした学びの変化に対応していく必要があるのではないでしょうか。たとえば、場所の制限なく人に会えるというオンラインの特徴を活かして、知的交流を広げるために活用できるインフラを大学がつくることで、より刺激的な体験や交流をサポートしていくというようなことも考えていきたいと思います。

 

― 北元さんは、大学に対する今後の期待などありますか。

北元 オンラインではどこにいても相手に会えるので、大学の教授や職員の方との距離がより近くなるのではないかと思っています。物理的な距離だけでなくオンラインであることで心理的なハードルが下がり、会うことが簡単になったということをプロジェクトを通して体感しました。大学と学生の距離感が縮まることで、さらに新しいことに挑戦しやすくなると思っています。


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