昨年末から追い続けてきた、佛教大学の学生による「酒づくりプロジェクト」。2度にわたるレポートで、本プロジェクトの概要から2015年度の醸造体験の様子まで紹介したが、それから早4ヶ月。とうとう日本酒が完成したとのことで、再び佛教大学へと足を運んだ。
参照:佛大生が挑む日本酒づくりプロジェクトを追う①
参照:佛大生が挑む日本酒づくりプロジェクトを追う②
ラベルやパンフレットもリニューアル
完成した日本酒を持ってきてくれたのは、本プロジェクト参加者の歴史学部3回生・高橋正也さん、社会学部2回生・内海僚介さん、社会福祉学部3回生・多田哲也さんの3名。前回の醸造体験以降、彼らはどのような動きをしていたのだろうか?
「まずは、ラベルデザインを固める作業に取り掛かりました。学園祭でのアンケート結果をもとに、一番人気だった案をさらにアレンジ。日本酒らしく和のテイストをベースにしつつ、シンプルで分かりやすく、若い人でも手に取りやすいようなイメージで調整しました」(内海さん)
確かに、完成品のラベルを見ると、和紙っぽい柄をベースに筆文字風のあしらいが印象的。和風だけれども渋すぎない、スタイリッシュな仕上がりだ。
「ラベルデザインが決まったら、それをもとに今度はパンフレットづくりに取り組みました。昨年のものをベースに、みんなで相談しながら、内容やデザインをブラッシュアップ。今年は特に、プロジェクトの歩みを紹介する部分で、各工程に参加メンバーの感想を加えたのがポイントです」(高橋さん)
なるほど。工程ごとにメンバーが作業に取り組む写真プラス一言コメントがあることで、より学生たちが密に関わっていることが感じられ、それぞれの奮闘ぶりが伺える。こうしてラベルやパンフレットが出来上がり、日本酒自体も完成を迎えた。
(左)本プロジェクトに関わった学生たち。左から、高橋さん、内海さん、多田さん。
(右)学生のアイデアがつまったパンフレットには、学生たちが取り組んだ日本酒づくりの工程が紹介されている。
いよいよ販売がスタート
2015年度版の日本酒も、昨年度版同様2種類を用意。一つは、新酒を濾過・火入れせずに瓶詰した「無濾過生原酒」。フレッシュな酒で、時間の経過と共に味が変化する。もう一つは、絞った酒を62~65℃に温めて殺菌した「火入れ」。こちらは酵素が失活することで、味が安定している。
3月2日~8日には「ジェイアール京都伊勢丹」にて販売プロモーションを実施。地下1階の和洋酒売り場にブースを設け、学生たち自ら店頭で試飲販売に取り組んだ。広い売り場の中でしっかりと客の目を引くよう、パンフレットとは別に、これまでの工程を写真と文章で紹介する大きなボードを作成。それを持って、自分たち大学生が一から作り上げた日本酒であることを、積極的にアピールした。また、事前に伊勢丹での研修にも参加。百貨店ならではのハイレベルな接客マナーを学び、挨拶や客への声掛けなど練習の成果を存分に発揮した。
(左)慣れないながらも全力で取り組んだ伊勢丹での販売経験は、大変だったが楽しかったと学生たちは語る。
(右)ブルーのボトルが美しい「佛米!夢乃酒」。ジェイアール京都伊勢丹に並んだ、300本は見事に完売した。
期間中は若い人から年配の方、さらには海外の方までたくさんの人の関心を集め、なんと最終日の閉店時間を待たずして、用意した300本が完売。「無濾過生原酒」は、しっかりとお米の味が感じられ、飲んだ後に甘味や香りが口の中に広がると、日本酒好きの人に好評だった。一方、「火入れ」はキリッとした口当たりで、味や香りはそれほど強くなく、日本酒を飲みなれていない人でも飲みやすいと評判だったとのこと。
「想像以上に興味を持ってくださる方が多くて驚きましたし、嬉しかったです。実際に目の前で飲んで、美味しいと言って、買っていただけて……。田植えから始まってここまで来られて、ものすごい達成感を感じられました」(多田さん)
学生たちの一年間の努力の結晶は、現在絶賛販売中。「無濾過生原酒」が1本720mlで1,620円、「火入れ」が1本720mlで1,512円(共に税込)。「細見酒店」(京都市北区)、「円町 島酒店」(京都市中京区)、「リカー&フーズまたの」(京都市左京区)、「山岡酒店」(京都市上京区)の4店舗で販売している他、細見酒店のネットショッピングからも購入できる(送料別)。日本酒好きの人も、苦手意識のある人も、ぜひ一度ご賞味いただきたい。