ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

年末年始、コミュニケーションのあり方を考える記事まとめ

2024年12月17日 / まとめ, トピック

年の暮れの風物詩のひとつといえば「年賀状の作成」……というのは、過去のものになりつつあるかもしれません。SNSの普及などを背景に2025年用年賀はがきの当初の発行枚数はこれまでで最大の減少率と報じられています。

ただ、手段は変わっても人と人とのコミュニケーションは生活の中で欠かせないもの。今回は、コミュニケーションのあり方を考える記事をふりかえります。

意外にマスク姿でも不自由なし? 手話によるコミュニケーション

 

口を大きく開けたり目を見開いたり、表情豊かな印象の強い手話。コロナ禍のマスク生活ではさぞコミュニケーションに支障が出たのではと思いきや、意外にろう者同士だと、それほど不自由しなかったのだそう。荷物で片手がふさがっていたら片手で、両手がふさがっていたら顔のみで、と「普段から、使えない部分があっても他で補う工夫を自然としているから」と手話の研究者。制約がある中でも情報を的確に伝える工夫があるようです。

 

記事はこちら!→ 手話コミュニケーションはコロナ禍をどう乗り越えた? 関西学院大学 手話言語研究センターで聞いてみた。

 

「そんなつもりじゃなかった……」知っておきたい、絵文字の注意点

 

SNSやメールで欠かせないのが絵文字。文字のみでは伝えきれない表情や感情を補ってくれる便利なツールですが、使い方によっては意図どおりに受け取られないことも。絵文字が相手にどのように伝わっているか、送った側と受け取った側の双方に注目して研究している先生が、研究成果をもとに絵文字を使うときの注意点などを解説します。

 

記事はこちら!→ 絵文字によるコミュニケーションを研究する 中央大学の高橋先生に話をきいてみた

 

えーと、あのー、何を目指して研究するの? 会話の「非流暢性」

 

会話の中で無意識に多用しているであろう「えーと」「あのー」「・・(言い淀み)」。

会話の「非流暢性」を研究する先生によると、人間にとって本質的なのは書き言葉ではなく、子どものころから自然と覚えて話せるようになる音声言語。そして、その音声言語は「宿命的に非流暢」なのだそう。立板に水のように話せなくていい、これからも非流暢でいこう、と自信(?)がもてます。

 

記事はこちら!→ 「非流暢に話す」とは? 京都大学・定延先生に“非流暢性”の 研究とその先にあるものを聞いた。

 

コーパス」ってどのように作るの? 何に活用される?

 

実際に使われている書き言葉や話し言葉を大量かつ体系的に集め、研究に必要な情報を付加して検索・分析できるようにした言葉のデータベースが「コーパス」。記事では、『日本語日常会話コーパス』の開発に取り組んだ先生が、日常会話の収集方法などを紹介。コーパスの活用方法について、音声認識技術などの情報処理分野のほか、医学など思いもよらない分野で役立つ可能性が紹介されています。

 

記事はこちら!→ 私たちの話し言葉は本当に変わってきたのか? 『日本語日常会話コーパス』の開発者、国立国語研究所の小磯先生に聞いてみた

 

 

生活に欠かせないものだからこそ、誤解や苦労も生まれやすいコミュニケーション。できれば気持ちよく、楽しく行いたいもの。これからも「えー」とか「うー」とか言いながら、努めたいと思います。

大学発広報誌レビュー第34回 東京藝術大学「藝える」

2024年12月5日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、東京藝術大学が発行する広報誌です。

東京藝術大学は美術学部と音楽学部を有する日本で唯一の国立総合芸術大学。その前身は1887年(明治20年)創立の東京美術学校で、多くの芸術家らを輩出してきました。

 

広報誌の名は「藝える」(「うえる」)。藝えるをうえると読むことにまず驚いてしまいますが、広報誌の紹介によると「藝」には「植える」という意味があるのだそう。もともと「藝」と「芸」は異なる系統の漢字で、「芸」には「草切る、刈る」という意味があるとのこと。

植えると刈るとでは意味が正反対ですが、アートの苗木を植えて育てる場だとすれば「藝」、樹木を剪定して手入れをするように技量に磨きをかける場とするなら「芸」。どちらも大切だから、どちらを使っていても問題ではないそうです。

 

もうひとつ、意外に感じたのはアウトドア雑誌のような表紙と特集記事。最新号(第15号)の巻頭では、大学山岳部の山小屋(黒沢ヒュッテ)の誕生と運営、山小屋における山岳部の活動について綴られています。

 

広報誌の制作者によると、読者に興味をもって読んでもらうため、冊子の冒頭に違和感やひっかかりを作ることを意識しているのだそう(東京藝術大学公式チャンネル「『藝える』制作秘話」)。

 

黒沢ヒュッテは戦後の登山ブームの中、当時山岳部顧問だった建築科助教授の監修により建築。山小屋を利用できるのは大学関係者に限られていますが、2023年より一般の人も参加できる滞在型創作イベント(「アートキャンプ黒沢」)が開かれるなど、一般市民に向けた利用の拡大を視野に入れていることが紹介されています。

山小屋にまつわる思い出を卒業生が語るページも。声楽科OGの「本気の歌唱であわや雪崩発生?」というエピソードが個人的にツボでした

 

下の見開きは、2つ目の特集ページです。上野キャンパス内にある「藝大保存林」とよばれる林地の再生、そしてキャンパスの周囲にある鉄柵を生垣に変える「藝大ヘッジ」。そのプロジェクトの現状と未来像を、プロジェクトにかかわる教授らが語っています。

 

環境保護か植物観察本のような誌面

 

取り組みの発端となるマスタープランを作成した一人、デザイン科の清水泰博教授は、藝大保存林の荒廃が進んでいたこと、そして学生たちに四季の感覚が乏しくなっていたことに問題意識を抱えていたそう。ランドスケープデザイナーの助力を仰ぎ、外来種に浸食されていた一帯に在来種を植えることになります。

 

「そもそも日本の自然から日本の文化が生まれているわけで、藝大の美術なんてまさにそこに根ざしたもの。(中略)自然からインスパイアされてアートをやっている藝大が本物を知らなくていいのか」。その植生は観賞用庭園のような美観優先ではなく、あくまでも自然の状態に近いもの。生垣づくりも同じコンセプトで、季節の変化が感じられるよう半分は落葉樹とするそうです。「植樹はアートでその空間づくりもアート」ということをどう伝え、周辺施設と連携していくか、とその取り組みを語っています。

 

大学広報誌で定番の授業紹介のページも。写真は使われておらず、手描きのイラストのみ

 

誌面全体のデザインは奇をてらわずオーソドックスなもの。過去の特集テーマは芸術と子育ての両立や、「アートを根幹に人類と地球のあるべき姿を探求するため」創設されたという「芸術未来研究場」など。どの号にも、芸術の根っこと向き合う姿勢があらわれていると感じます。

 

介護が必要になっても生き生きと暮らしたい。自律をサポートする介護「モンテッソーリケア」について大阪大学の杉田美和先生に聞く

2024年9月10日 / この研究がスゴい!, 大学の知をのぞく

超高齢社会で介護や支援を必要とする人がますます増える中、「モンテッソーリケア」とよばれる介護を行う高齢者向け施設があります。モンテッソーリケアとは、イタリアの医学博士であるマリア・モンテッソーリが考案した子どもの主体性や尊厳を尊重する「モンテッソーリ教育」の理念を、高齢者や認知症の方の介護に取り入れたものです。

 

2020年に一般社団法人日本モンテッソーリケア協会を立ち上げ、モンテッソーリケアを研究、実践するのが大阪大学工学研究科特任准教授の杉田美和先生です。杉田先生はまちづくりの研究に取り組む中で「まちづくりには福祉が重要だ」と、自ら高齢者向け施設「柴原モカメゾン」(サービス付き高齢者向け住宅)と「暮らす看護ホスピスもかの家」を設立し、モンテッソーリケアを取り入れた運営をされています。どのようなケアが行われているのか、施設に伺って話をお聞きしました。

モンテッソーリケアが行われるサービス付き高齢者向け住宅「柴原モカメゾン」(大阪府豊中市)。まちづくりの観点から外観に格子が取り入れられ、夜はライトアップされる

 

介護が必要でも、自分でできることは自分で

大学卒業後はエンジニアとして就職し「もともと、頭の中が『0、1』のコンピュータ技術者でした」と笑う杉田先生。自身の子育てを通じてモンテッソーリ教育と出会い、その縁で「モンテッソーリケア」を知り、オーストラリアにあるモンテッソーリケアの現場を視察。そこでは認知症の方がそれぞれの役割をもち、生き生きと過ごしていたことに感動したといいます。

モンテッソーリケアには、どのような特長があるのでしょうか。

 

「介護が必要になっても自分でできることは自分で行い、コミュニティの中で自分の存在意義を見つけて生き生きとした毎日を過ごせること。そのために、一人ひとりの高齢者に寄り添う介護です。たとえば……」杉田先生はそう言って、私の前に色の異なるボールペンを二本差し出し「どちらのペンがいいですか?」と問いかけました。

 

「一本のペンを差し出されて『このペンをどうぞ』と言われるのと比べると、どうでしょうか。これは一例ですが、この施設ではダイニングの椅子も色違いのものをそろえたり、朝食は一部ブッフェ形式にしたり。好きなものを選ぶことができると自分の意思が尊重されていると感じ、安心感を覚えます」

杉田先生

 

好きなものを選択できることで、自尊心が向上するのですね。食事や入浴などで介助が必要な場合は、どのようにサポートするのでしょう。

 

「スタッフの見守りのもと、できるだけご自身で行っていただけるようサポートします。人は何かをできなくなると自分の存在価値に不安を抱くようになり、それが妄想や抑うつ、意欲低下や徘徊など、認知症の周辺症状を引き起こす一因となります。安全を確保しつつ、できることをしていただくことで残された機能が保たれ、達成感が得られます。精神的な満足を得ると、認知症の周辺症状を減らすことができるのです。

ここで大切なことは、失敗してもいい『エラーフリー』の考え方。失敗を指摘したりとがめたりしないことが、意欲や自信につながります」

自身の存在意義を実感する「役割」

杉田先生によると、モンテッソーリケアの実践には3つの大きな特長があります。

一つ目の特長は「役割」です。

「人は一方的にサポートしてもらうだけでなく、誰かの役に立ちたいという気持ちがあります。その思いを尊重し、たとえば調理の手伝いや食器洗い、植木の水やりなど、日常生活の中でその方が自主的に担える役割を持っていただくようにします。

コミュニティの中で役割をもつことで自尊心が向上し、さらにさまざまなことを自発的にしてくださるようになります。食器を洗える方は他の方の食器も洗ったり、他の入居者の車椅子を押して介助したり。スタッフも、そうしたくなるような環境づくりを行っています」

 

役割をもっていただくようスタッフから提案する場合は「言葉の使いかたがとても大事」とのこと。たとえば下の画像には、ジャム作りを提案するボードが写っています。

 

ボードに書かれている文字は『リンゴジャム作りを手伝っていただけませんか?』。

「なにげないようですが、配慮された丁寧な表現を使うことで、自然に取り組んでいただくことができます。役割をもち、人に感謝されると自分の存在意義を感じることができ、さらなる意欲につながります」

精神的な満足を得る「アクティビティ」

二つ目の特長はアクティビティ(活動)です。

「その方の興味あることや好きなこと、長所をしっかりと観察して、その方に合ったアクティビティを準備します。たとえば歌を歌うことが好きな方、数字の計算が得意な方、コーヒーの豆を挽くのが上手な方など、それぞれの方が人生の中で培ってきた感性や経験を引き出すような作業やゲームなどです。

こうしたアクティビティはその方の残存機能を維持するだけでなく、精神的な満足感を高め、認知症の周辺症状を減らすことにつながります。スタッフの見守りのもと安全を確保した上で、ご自身で作業をしてもらえるようサポートします」

 

食事、入浴、排泄、着替え、ボタンをかけるなど、日常生活の動作すべてがアクティビティとなり得るとのこと。アクティビティを通して、新たな役割が発見されることもあるそうです。

自立の強い味方となる「サイン」

自分でできることをしたいという思いがあっても、記憶障害によりさまざまな困り事が起こるのが認知症です。三つ目の特長は、認知症の方に安心感を与える「サイン」です。

 

「忘れてしまうということは、本人にとっては不安なこと。認知症の方は不安の中にあります」。その不安は、自分の存在意義に関わるものだといいます。

 

そこで役立つのが、記憶を補う「サイン」です。自分の部屋がわからなくなる方のために、部屋のドアにその方の若い頃の写真を貼る。来客の予定を思い出しやすくするため「何時に誰が来る」などの予定を記す「キューカード」。お茶の淹れ方、トイレの手順などを記した「タスクブレイクダウン」。人生の良い思い出をまとめた「メモリーブック」など。メモリーブックには、家族や親族の顔を忘れた方のために顔写真つきの家系図をつけることもあるそうです。

タスクブレイクダウンの一例

 

サインは黄色地に黒字が一番見やすいそうです

 

「役割」「アクティビティ」「サイン」など、生き生きと自分らしく生きるために、どれもとても有効だと思います。一方、こうした方法では対処しきれない事態も認知症の方々には起こるのではないでしょうか。

 

「モンテッソーリケアには様々な方法がありますが、認知症の方の要望や困りごとはいろいろです。たとえば、どうしても一人で外出したいという要望をお持ちの方がいれば、その要望に沿う方法を考えます。その方の場合、外出するとき当初はスタッフがついて行って見守っていましたが、確実に一人で帰って来られるので、ご家族とも相談して「外出許可証」を作成して本人にお見せし、エアタグ(スマートフォンなどで位置情報を探索できる紛失防止タグ)をお持ちいただき自由に外出していただいています。

 

『幸せなことは忘れてしまうかもしれないが、幸せな気持ちは忘れない』とその方におっしゃっていただき、認知症の方の本心を伺えた気がして感動しました。

多様な場面において、相手の尊厳を大切にするというモンテッソーリケアの理念に基づき、トライアンドエラーで最適な方法を考えます。そのためには相手をじっくりと、愛情をもって見ることが大切です」

 

こうしたケアにより、入居者の方にはどのような変化が見られるのでしょう。

 

「入居当時は自分で食事できず、歩けず、不穏状態の時間が長かった方がいました。その方は、容器に入ったボールをスプーンですくって別の容器へ移すというアクティビティを行うことで、自分で食事をとれるようになり、嚥下機能がよくなり、手を引けば歩けるようになり、さらに泌尿器系の疾患を改善することで、不穏状態がほとんど無くなりました。

また別の方の場合、この施設に来られるまで暴言や妄想が激しかったのですが、コーラス部長という役割を担っていろいろな人と関わるようになり、穏やかになられたという例もあります」

 

痛みや不安がなく、自分らしくいられること、自分の存在意義を感じられること。精神の安定のために欠かせないことだと感じます。

介護が必要でも必要でなくても変わらないこと

今後のケアのあり方について、杉田先生はどのようにお考えでしょうか。たとえば今、介護現場でのロボットやICTの活用について耳にすることがあります。

 

「当施設はリビングラボとして、大手IT企業と大阪大学と協同研究をしています。ICTは介護の手助けになると考えており、たとえばロボットが血圧を測ることもできるでしょう。

ただ、血圧を測るときにも、人間であれば『今日の体調はどうですか』などと言って相手の腕を取るスキンシップやコミュニケーションがある。これらを継続することがとても大事です」

*リビングラボ…実際の生活空間を再現し、利用者参加のもと、新しい技術やサービスの開発を行うなど介護現場のニーズを踏まえた介護ロボット開発を促進するための機関

 

「皆で『豊かな心の世界』を作っていくことを目標にしている」という杉田先生は、2025大阪・関西万博で「未来の介護」の出展を予定。また、モンテッソーリケアの研究と実践のみならず、経営者として企業やまちづくりのコンサルティングも行っています。取材の最後に、こう語った言葉が印象に残りました。

 

「もともと、福祉がこれほど大事だとは思っていませんでした。企業のコンサルティングをしていて、企業をより良くすることが社会を良くすることだと思っていたのです。でも企業には、基本的には元気な人しかいません。それは社会のごく一部分の切り抜きでしかない。社会には赤ちゃんも高齢者もいて、全部で社会が成り立っています。

 

子どもにはモンテッソーリ教育、ケアが必要な人にはモンテッソーリケア。では、成人で、今そうしたサポートを必要としていない人はいかがでしょうか。皆で『モンテッソーリライフ』を送っている、または求めていると言えるのではないでしょうか。尊厳をもち、人との関わりの中で自分らしく生きること。マリア・モンテッソーリがうたった理念は、人生のどの段階においても変わらないと思います」

 

介護が必要かどうかにかかわらず、人は自律的に、尊厳をもって生きたいと願っている。モンテッソーリケアの根底にある考え方は、すべての人に通じる指針だと感じました。

 

大学発広報誌レビュー第33回 大阪大学大学院医学系研究科広報誌「DOEFF(ドゥーフ)」

2024年8月8日 / コラム, 大学発広報誌レビュー

硬軟取り混ぜた切り口で医療研究の最前線を紹介

全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学発広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、大阪大学大学院医学系研究科が発行する広報誌『DOEFF(ドゥーフ)』です。

同研究科は「ヒトの生命現象を解明する」研究を行い、大阪大学医学部附属病院と連携。その起源は国内初の官立病院として1869年(明治元年)に設立された「大阪仮病院」で、源流は江戸時代末期に緒方洪庵が開いた適塾にさかのぼります。DOEFF(ドゥーフ)という広報誌の名は、かつて適塾の塾生たちに親しまれた蘭和辞典の通称に由来するとのこと。

冊子の表紙も中身もしっかりとした厚手の紙で、長く手元において読めそうな造りです。

最新号(13号、2024年3月発刊)

 

表紙に目次が掲載されていますが、ゴシック体から軽快な手書き風文字までさまざまなフォントで作られたタイトルロゴがそのまま使われていて、硬軟取り混ぜた内容を予想させます。

 

表紙をめくると、「アートな体躯(からだ)」の文字と、漆黒に浮かぶ蛍光色。

 

写真に写っている細長いものは線虫で、ところどころで光る粒状のものは線虫の体壁筋にあるタンパク質だそう。

 

次の見開き(下の写真)右ページに掲載されているのは、ウイルス感染により血管オルガノイド(ミニサイズの立体組織)に形成されたという血栓の画像。画集のようにしっかりとした紙に印刷されていることもあって、「現代アートです」と紹介されても納得してしまいそう。

 

下は、8ページにわたる「超常識」という記事。常識を超えた新しい医療の形を提示するというコンセプトの記事で、最新号のテーマは「認知症」。5名の医師が、それぞれの専門分野における最新の研究を一般の人にもわかりやすい言葉で紹介しています。

 

認知症は今のところ根治療法はなく早期発見が重要とされますが、認知機能の検査は時間がかかり、受診者に大きな負担がかかります。この記事で紹介されているのは所要時間約3分、タブレットさえあれば受診者の目線の動きだけで認知機能を検査できるという画期的な検査方法。認知症のプログラム医療機器(※)として国の承認を得て、実用化に向けて前進したことが掲載されています。

※プログラム医療機器……医療機器の機能を持つプログラムが搭載された記録媒体のこと。高血圧の治療用アプリなどもその一種。疾病の診断に用いるものと、治療に用いるものの2種類がある。

 

別の医師が紹介するのは、多職種の専門職チームが専門職の視点で患者さんの生活環境を整えたりIoTを導入したりする見守りシステムの構築など。こちらは精神科の臨床医で、「病気を正しく診断するだけでなく、患者さんの気持ちに寄り添い、生活を支えていくことが重要」と述べています。

 

ちょっとした息抜きの記事も。下は「医者の不養生」ならぬ「医者の養生」(「不」が打ち消されています)。親しみやすいタッチのイラストとともに、多忙な医師の「元気の素」を紹介。ふだんの心がけや、専門分野に関連したアドバイスも参考になります。

 

このほか、キャリアを積んだ医師がこれまでの研究人生を語る「ドクターの肖像」、今、注目のキーワードを解説する「医療のフロントラインを語る5つのキーワード」という記事があり、いずれも専門的な内容が一般の人向けに理解しやすく紹介されています。

 

さまざまな切り口で「一般の人に最新の知見をわかりやすく」「長く手元において読まれるものを」という意気を感じる誌面。医療や健康に興味のある方にとっていろいろな発見があり、「もっと知りたい」という気持ちになりそうな広報誌です。

踊るラテンアメリカ教養講座! 在日ブラジル人のダンス「フォホー」を京都外国語大学で体験した

2024年7月25日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

好きなアーティストの曲にダンス音楽、今の季節なら夏祭りのお囃子など、音楽を聞くとついリズムに乗って踊りたくなるという方は多いのでは?

京都外国語大学では6月、アフロ性(黒人性)の影響を受けたラテンアメリカの音楽をテーマとしたラテンアメリカ教養講座『アフロ・ラテンミュージック on Friday Night』(主催:京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター)が行われました。

講座は4回シリーズで、取材した日はブラジルの音楽とダンス「フォホー(Forró)」についての講義と希望者参加型のダンスレッスン。フォホーは日本のブラジル人コミュニティでも日常的に踊られていて、ブラジルの文化的なアイデンティティでもあるといいます。

 

ブラジルのダンスといえばサンバが有名ですが、フォホーとはどんなダンスなのでしょう。ダンスを見てみたい(できれば踊りたい)、また踊りと文化的アイデンティティとの関係についても知りたいと思い、会場に足を運びました。

講師は上智大学准教授のニウタ ジアス先生です。

ニウタ ジアス先生

 

ブラジル人にとって、フォホーはただのダンスではない

講師のニウタ先生はブラジル出身で、1997年に初来日。在日ブラジル人の子どもの教育を専門としています。この日は「ダンスを楽しみ、在日ブラジル人の日常生活を知ってもらいたい」と講座のねらいを話し、音楽の由来などについてのレクチャーから始まりました。

フォホーはブラジル北東部のダンス音楽で、先住民やアフリカ、ヨーロッパの音楽の影響を強く受けています。ザブンバとよばれる太鼓とトライアングル、アコーディオンの演奏に、愛や苦しみなど生活に根差したさまざまな思いをのせて歌われます。

 

やや年配の人が好む地方の音楽というイメージだったそうですが、1950年代に歌手で作曲家、アコーディオン奏者のルイス・ゴンサーガなどのヒット曲をきっかけにブラジル全体に人気が広がり、さらに90年代にもフォホーの人気グループが出てきて、若者の間でも広まったとのこと。

豊穣を祝うブラジルの祭り“Festa Junina”(6月の祭り)でもフォホーが踊られる(講座資料より)

 

ニウタ先生は長く日本に住むブラジル人の一員として、また研究者としても群馬県のブラジル人コミュニティに関わってきています。フォホーはこうしたコミュニティでも日常的に踊られていて、「多くのブラジル人がフォホーを通じて一つにつながることができる」とニウタ先生。「ブラジル人にとってフォホーはただのダンスではなく、ブラジル人のアイデンティティとして大切なもの」だといいます。

 

後半はいよいよダンスの実演です。希望者はフロアに出て、レッツ・ダンス!
いくつかのステップを教わり、まずは見よう見まねでステップを踏みます。

 

フォホーはペアで踊るダンス。友人どうし、そして初対面の人どうしで、踊りの輪ができます。

この笑顔! 南国の陽気なリズムで自然に体が動きだします

 

ダンスの実演は約40分間。シンプルなステップが複雑になるにつれ、あちこちで即興のオリジナルダンスが生まれ、笑い声が上がっていました。テンポはそれほど速くなく、ほどよく力の抜けた音楽。「リズムにのって楽しく踊れたらOK」という気軽な雰囲気は、日本の盆踊りのようでもあります。

 

ニウタ先生は「できる、できない、うまい下手は関係なし。うれしいとき、悲しいとき、元気を出すために踊る。それがフォホーです」。まさにその言葉どおりの陽気で気さくなダンスでした。

「教える」のではなく、交流したい

日本に住むブラジル人の子どもにとって、フォホーはどんな存在なのでしょう。講座の後、ニウタ先生に少しお話を伺いました。

 

「フォホーは、結婚式や誕生日パーティ、クリスマスなどで、子どもの頃から家族とともにコミュニティの中で踊るダンス。日本の学校に行っていると、周りの環境に合わせるために自分がブラジル人であることを隠したり、自国の文化を否定してしまったりすることがありますが、そんな子どもにとってフォホーはブラジル人としての自分をポジティブに受け入れる機会となります」

 

自国の文化を否定してしまうとは辛いことです。在日ブラジル人の子どもが通う学校はブラジル人学校や日本の公立学校、もしくはその両方(平日は日本の公立学校に通い、土曜日だけブラジル人学校に通うなど)ですが、日本語教育の機会が十分ではないケースがあり「言語の壁は大きい」とニウタ先生。言語の壁は、子どもが将来像を描きにくくなることにもつながります。

 

「教育の環境は近年かなり改善されていて、日本の大学に進学する子どもも増えている一方、学校に行かなくなる子どもや高校に進学できない子ども、日本とブラジルを行き来して日本語にも母語(ポルトガル語)にも自信をもてない子どももいます。

そういう子どもたちは『できない』のではなく、学ぶチャンスや『この人のようになりたい』と憧れるロールモデルが身近にない。必要なのは、将来の夢をもてるような環境です」

 

今回は一般の人を対象にダンスレッスンが行われました。そこに込めた思いについて、ニウタ先生は「ダンスで交流を深めると相手に親しみを感じ、もっと知りたいという気持ちになるでしょう。知識を教えるという形ではなく『交流』がしたいのです。それがお互いのすばらしさを知ることにつながるから」。

 

音楽やダンスはそれだけで楽しいものですが、自分らしさを確かめるよりどころであり、また隣人を知る絶好の機会にもなる。先生のお話を聞いて、この日フォホーを踊りながらあちこちで広がっていた笑顔を思い出して、そう感じました。

未知への扉をひらくエンターテイメント「マンガ」の魅力を再認識する記事まとめ

2024年7月18日 / まとめ, トピック

7月といえば七夕、土用の丑、海の日などがありますが、「漫画の日」というものがあるのをご存じでしょうか。風刺的な漫画を掲載し、漫画文化に大きな影響を与えたイギリスの週刊誌『パンチ』が1841年7月17日に創刊されたことにちなみます。

マンガの熱心な読者ではなくても、かつて夢中になって読んだ記憶をお持ちの方も多いのでは? 今回は身近なエンターテイメント、マンガの魅力を再認識する記事をふりかえってみました。

*ちなみに「マンガの日」は、ほかにも手塚治虫の誕生日(11月3日)などがあります

フェリス女学院大学の授業「コミック『ゴールデンカムイ』で学ぶ多文化共生」を聴講して、アイヌの食文化を学んできた

フェリス女学院大学での授業「コミック『ゴールデンカムイ』で学ぶ多文化共生」より「アイヌの食文化」をテーマとした講義レポートです。

『ゴールデンカムイ』(野田サトル作)は謎の金塊をめぐって北海道を舞台に繰り広げられる物語で、作中で登場するさまざまなアイヌ料理も見どころの一つ。アイヌ文化を丁寧に描いている点も高く評価されていて、講義レポートからも作品の奥深さが感じられます。

 

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https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/ferris_goldenkamuy/

アフリカマンガの最前線! ブリコラージュな表現のスピリット。京都国際マンガミュージアム「アフリカマンガ展」レポート

「アフリカのマンガ」と聞いてピンとくる方はそれほど多くはないかもしれません。2023年に京都国際マンガミュージアムで行われた展示「アフリカマンガ展」では、アフリカ出身の作家がアフリカ人を主人公に描いた漫画や、日本のマンガのスタイルが取り入れられた作品などが紹介されました。

マンガを通してアフリカの暮らしを身近に感じられそうな点は『ゴールデンカムイ』におけるアイヌ文化と同じ。アフリカの「今」を知ることができそうです。

 

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https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/kyotomm_africamanga/

圧倒的画力と創作エネルギーに溢れる空間! 東京造形大学「ヤマザキマリの世界」展

『テルマエ・ロマエ』をはじめとする漫画や絵画、著述家としても活躍するヤマザキマリさん。漫画や絵画、著述家の3つの側面からその作品の魅力に迫る「ヤマザキマリの世界」展の展示レポートです。

同展は東京造形大学の学生や卒業生らが協力して進めたプロジェクト。ヤマザキさんの創作に対するエネルギーには圧倒されますが、学生らとのコラボレーションも見ものです。

 

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https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/yamazakimari/

学習院大学特別講義・夏目房之介先生に学ぶ 「マンガ表現のしくみ」

自称「漫画コラムニスト」、夏目房之介先生による学習院大学での特別講義では、マンガに見られる特有の表現技法について丁寧に解説。車が止まる絵とともに「キキキキーー」という文字が大きく画面を横切るような表現は、マンガに親しんだ人には特に珍しいものではありませんが、外国人からは意外に注目されるのだそう。マンガ特有の表現を読み取る「マンガリテラシー」を、知らずしらずの間に身に付けていたことに気付かされます。

 

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https://hotozero.com/enjoyment/learning-report/natsumefusanosuke_manga_report/

 

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『ゴールデンカムイ』でアイヌ文化を身近に感じ、アフリカマンガでアフリカの日常を知り、『テルマエ・ロマエ』でローマのお風呂と歴史を知る。マンガにはいろいろな魅力がありますが、未知の世界への敷居をぐっと低くして、さまざまな世界へ招き入れてくれます。今回ふり返った記事からは、マンガのそんな力が特に大きく感じられました。

 

「オーディオアート」とはどのようなものか、東洋学園大学の公開講座でふれてみた

2024年7月11日 / 体験レポート, 大学を楽しもう

「オーディオアート」と聞くと、みなさんはどのようなものをイメージするでしょうか。メロディやハーモニーのある音楽とは異なり、ちょっと難しそうな印象をお持ちの方もいるのでは。私もそんなイメージを持っていた一人ですが、東洋学園大学で公開講座「オーディオアートの世界~電子音楽、サウンドコラージュ、フィールドレコーディング~」が行われると知り、実際のところはどのようなものか、視聴しました。

講師は電子音響音楽を専門とする音楽家で、日本電子音楽協会理事の渡辺愛先生です。

 

講座スライドより

 

意外に映像的、オーディオアート

渡辺先生によると、今回のテーマであるオーディオアートとは「録音された音」と「電子音楽」という二つの大きな流れが合わさってできたものだそうです。まずはサンプルとして、先生の曲を聴かせてもらいました。タイトルは『Tropical Travelogue』(2017年)。

 

どこからともなく響くホワンホワンという浮遊音、外国語の話し声、街中でおじさんが叫んでいるような声。クルマの音、クラクション、鳥の鳴き声、金属音、ピィーーンという電子音……。さまざまな音によってつくられた作品ですが、目を閉じて聴いているとまるで夢幻的な映画を見ているように、情景が目の前に浮かんでは消えていきます。

 

この作品は先生がマレーシアのペナン島に滞在し、島のあちこちでレコーダーを回して録った音を素材としたもの。ホワンホワンという浮遊音はシンセサイザーの音で、ペナン島で収録したフィールドレコーディングの音とともに使われています。

 

渡辺先生によると、このように録音された音とシンセサイザーの音を組み合わせて作られた作品が「電子音響音楽」と呼ばれます。わかりやすい呼び方だと「オーディオアート」。一方、シンセサイザーの音だけで作られた作品は「電子音楽」と呼ぶそう。渡辺先生の作品はメロディやビート、ハーモニーのようなものをあまり感じさせない実験的なものでしたが、例えばYMOやPerfumeなどメロディやハーモニーなどの要素がはっきりした作品も、広い意味で「電子音楽」だそうです。

新しい技術ができると、変わったことを考え出す人が現れる

こうした音楽の源流のひとつは録音という技術です。音声を記録し再生できるようになったのは、約150年前にエジソンらが蓄音機を開発してからのこと。録音がルポタージュや娯楽の新しい担い手となっていき、やがて音楽の鑑賞に堪えうる録音ができるようになると「録音技術を用いたアート、新しいクリエイションができないかと人々は考え出すようになったのです」と渡辺先生は言います。

 

ひとつの例として、ウォルター・ルートマンという人の音楽作品『Weekend』(1930年)が流れました。エンジン音にピアノやフルート、人の話し声、乗り物の音などが現れては消え、また別の音が現れ……。冒頭で聴いた先生の作品の原型に近いものを感じます。

音楽と呼ぶにはあまり音楽らしくない印象ですが、こうした作品は写真になぞらえて考えるとわかりやすいそうです。「写真という技術ができると、例えば写真を切り抜いて、畑の中にエッフェル塔が突っ込んでいるコラージュを作るなど、変わったことを考え出す人が必ず現れる。この録音技術についても、近いことがと言えると思います」

 

このジャンルの重要な作品が、フランスの国営ラジオ局に勤めていた音響技師、ピエール・シェフェールが生み出した『鍋のエチュード』(1948年)。こちらも講座で聴くことができました。

鍋を木でたたくような音や機械のうなり声のようなもの、人が何かを唱えているような音声が混ざりあい、やや不穏な雰囲気を醸し出しています。先に紹介してもらった『Weekend』と似ている気もしますが、なぜ “重要な作品”とされているのでしょうか。

 

「音の三大要素には高さ、大きさ、音色がありますが、その中でいちばんパラメータとして複雑なのが音色です。音色を音色たらしめる要因はいろいろありますが、その一つが、音が時間の経過とともにどのように変化するかを表したエンベロープというもの。

例えばピアノの音の形は立ち上がりがとても強く、だんだん減衰して消えていく。時間によるこうした変化が、ピアノがピアノらしい音色に聞こえる一つの要因です。変化として捉えることが大切なので、このうちコンマ一秒だけを切り取って何の音かと聞かれても、ピアノの音とは判断できません」

 

ピエールはラジオ局の一角でいろいろな実験を行った結果、ピアノの音が減衰していく終わりの方を切り取ってループさせるとフルートのような音がする、というように、音の切り取り方によってまったく違った音に生まれ変わることを発見。音が何からどう出ているかという文脈から切り離して、音を加工して作られたのが『鍋のエチュード』なのだそうです。

 

アメリカでラジオ放送が始まったのは1920年ですが、その草創期からこうした実験的な音響作品が放送されていて、ドイツ語でヘールシュピール(聴く遊び)と呼ばれていたとのこと。

「一般的には、パリーンと音がしたら、『あっ、何か割れた』などと思うんじゃないでしょうか。一方、シュピールのおすすめした聞き方は、このように音の原因や意味にできるだけとらわれず、物理現象としての音のなりたちを聴こうというもの。パリーンという音は、たとえば “高音で残響の多い単発音”となります」

 

まるで計測機器のような聴き方に思えますが、いろいろな音を切ったり貼ったりして遊びたくなる気持ちはわかる気がします。このように音を加工して再編成された音響作品は「ミュジック・コンクレート」とよばれ、またたくまに世界に広がっていったそうです。

シェフェールが提唱したのは音をもとの文脈から切り離し、完全に対象(オブジェ)として聞こうとする態度ですが、これに対し、ある時は音を物理的なとしてフォーカスし、ある時はもとの音のイメージを包み込む、両方の聞き方があっていいという音楽をめざしたのがリュック・フェラーリという人。このタイプの音楽もミュジック・コンクレートの一ジャンルとなっているそうです。

電子音響音楽に求められる“基礎力”とは?

音の素材の内容にとらわれないというならピアノの音でも、道路の音でもなんでもいい。なんでもいいなら自然や社会から発せられた音でなくてもいい。つまり「電子音でもいい」というわけで、電子音響音楽のもう一つの源流、電子音楽についても紹介がありました。

 

ラジオの開局と同じ年に発明された電子楽器「テルミン」、シンセサイザーだけでバッハの曲を再現したウェンディ・カルロス。そして講座の終盤には、電子音響音楽をコンサートで上演するための立体音響装置「アクースモニウム」の紹介がありました。

講座スライドより、アクースモニウム(立体音響装置)を操作する渡辺先生。コンサート会場に複数のスピーカーを配置し、それぞれの音量を調整する

講座スライドより。野外でのアクースモニウムの例

 

講座ではさまざまな作品やアーティストの紹介がありましたが、講座後に検索して聴いたドイツの作曲家シュトックハウゼンによる『少年の歌』など、一度耳にしたら忘れられない印象でした。

 

講座での質疑応答でも興味深いやりとりが行われました。その一つが、このジャンルでの「基礎力」とはどういうものか?というもの。通常の楽器演奏においては基礎的な演奏技術が必要とされますが、今回紹介されたような電子音響音楽(オーディオアート)で求められるベースとはどういうもので、何が評価の対象になるのでしょうか。

 

渡辺先生は「音楽は時間芸術なので、ある時間の中に音の様相をどう置くか、時間をどう操作するのかが評価の対象となります。たとえばある素材が作品の中で発展し、そこに突然裏切りの表現が生まれるとき、そのタイミングが絶妙というように、時間の中での音楽的なストーリーの作り方が重要。芸術的な価値のある作品を作るためにはいろんな人の曲を聞いたり分析したり、コンセプトを考えたりしてその感覚を鍛えることが基礎力となります」。

また、最終的には録音によって作品が完成するため、狙った音をうまく録る技術、音のクオリティはもちろん重視されるとのことです。

 

講座の前半で聴かせてもらった『Weekend』という作品は「映像のない耳のための映画」として映画館でも “上映”されたそうですが、今回の講座では、耳のための映画を聴く新しいチャンネルを自分の中に作ったような感覚があります。

近年はパソコンを使って手軽に音楽を作ることができるようになり、小学生にこうしたソフトを渡すと、自由に音をコラージュしておもしろい音楽を作るのだとか。そんな話を聞きながら、自分もちょっと体験してみたい気がした講座でした。

夏休みに無料で遊んで学べる。全国の大学の子ども向け科学教室をチェック!

2024年7月4日 / まとめ, トピック

子どもたちにとって待ちに待った夏休みが近づいてきました。長い休み、ふだんはできない体験ができる絶好の機会。全国の大学や研究機関でも、小・中・高校生に向けたイベントの予定がめじろ押しです。今回は無料で参加できる科学教室の中から、ほとゼロ編集部がピックアップしてご紹介します。

*いずれのプログラムも定員があります。詳しくは各プログラムのホームページでご確認ください。

北海道科学大学

なぞの生命体ふよふよ~水の中をぐるぐる動くゲルをつくろう!~

まずは北海道エリアから一つご紹介。プリンやコンタクトレンズなど身近に使われる「ゲル」がテーマです。指でつまめる水や人工イクラを作って観察し、ゲルの仕組みをひも解こうというプログラム。「ふよふよ」「ぐるぐる」、手で触れ、目で見て楽しめそうです。

 

|開催日:8月9日(金)

|対象:小学校5・6年生

|申込:7月26日(金)まで

 
●詳細はこちら!

https://www.hus.ac.jp/news/detail/d1d50cf43b84c05e4a622b2764a895e768e2238f-18134/

 

秋田県立大学

第17回夏休み科学教室「創造学習」/「おうちで創造学習」

エレキギターの作成、手書き数字を読み取るAIの作成など、15の対面講座と2つのオンライン講座を取り揃えるのは秋田県立大学。ミニ畳作りやオリジナル灯篭作成など、和のものづくり体験も。ものづくりを通して、最先端の科学や職人の技を体験できるのが魅力的。

 

|開催日:7月27日(土)~7月29日(月)

|対象:秋田県内の小中学生

|申込:7月12日(金)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.akita-pu.ac.jp/event/event2024/8424

 

北里大学

マイナス100度の世界 ~元素でつながる分子の世界~

 

マイナス100度の世界を知るプログラム。有機分子の模型を作ったり、フラスコの中の色の変化を観察したり。マイナス100度ではどんな自然現象が起こるのでしょう? 非日常の世界をかいま見れそうです。

 

|開催日: 8月6日(火)、7日(水)、8日(木)

|対象:小学校5・6年生、中学生、高校生

|申込:7月31日(水)まで(先着順)

 

●詳細はこちら!

https://www.kitasato-u.ac.jp/sci/news_event/index.php?c=topics_view&pk=1716860258

 

 東京大学

メタバース工学部ジュニア講座「渋滞学入門 ~クルマの渋滞編~」

夏の遠出といえば車の渋滞がつきもの。この講座では高速道路における渋滞のメカニズム、クルマの交通流の特徴を示す基本図を学び、数学的手法を使って現象の本質を捉えたモデル化を体験します。しくみが分かれば、渋滞もこわくない(かもしれない)!

 

|開催日:7月29日(月)、30日(火)*オンライン(Zoom)での開催

|対象:中学生、高校生(それ以外の方も受講可)

|申込:7月22日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/events/z0104_01453.html

 

福井大学

2024年度福井大学公開講座 今日からきみも和算博士!-江戸の算数・数学に挑戦!-

「和算(わさん)」は、江戸時代の算数・数学のこと。「鶴亀算」など難しかった記憶がありますが、この講座は算数が苦手でも大丈夫とのこと。日本で独自に発展したという算術の世界はどのようなものでしょう?

 

|開催日:7月27日(土)、28日(日)

|対象:小学5年生から高校生

|申込:7月5日(金)9:00から7月21日(日)まで

 

●詳細はこちら!

https://chiiki.ad.u-fukui.ac.jp/wp-content/uploads/2024/05/24072728_fukuiuniv_oc_13-1-2.pdf

 

 大阪大学

第11回 夏休みおもしろ理科実験 「つかめる水」と「光るスーパーボール」を作ろう!

「つかめる水」と「光るスーパーボール」を作り、化学反応によるいろいろな変化を体験できるプログラム。理科の楽しさを感じられそうです。

 

|開催日:8月2日(金)

|対象:小学3~6年生

|申込:7月22日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.osaka-u.ac.jp/ja/event/2024/08/10820

 

広島国際大学

体の中で活躍する見えない"酵素"の働きを光らせて確認しよう

食べ物を消化したり、吸収された栄養素からエネルギーを作り出したり。わたしたちの体内でさまざまな化学反応を促進する「酵素」は、生きていくために欠かせない存在です。そんな酵素を光らせて、仕事ぶりを確かめようというプログラム。目に見えない働き者を見れるかな?

 

|開催日:8月6日(火)、8月27日(火)

|対象:小学5・6年⽣

|申込:7月29日(月)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.hirokoku-u.ac.jp/event/j-hirameki.html

 

福岡女子大学

ナメクジは賢い!~ナメクジの学習行動と脳のしくみ~

「気持ち悪い」と毛嫌いされがちなナメクジ。でも、一回学習しただけでものごとをしっかりと記憶するなど、その脳はとてつもない能力を秘めているのだとか。ナメクジの学習行動実験と脳の解剖を体験できるプログラムで、ナメクジのすごさを実感できそうです。

 

|開催日:7月22日(月)、29日(月)

|対象:小学5・6年⽣

|申込: 7月11日(木)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_hirameki_24/24ht0181.pdf

 

理化学研究所

理研DAY:研究者と話そう!「お家でサイエンス!~ろ紙にお花を咲かせよう~」

「大学の子ども向け講座、楽しそうだけど近くに大学がない……」。そんな方には、オンラインの科学教室もあります。水性ペンとろ紙(またはコーヒーフィルター)を使って、水性ペンのインクを分ける実験を行うプログラム。真っ黒なインクのはずが、実は……? 身近なものの意外な素顔を知ることができそうです。

 

|開催日:8月6日(火)

|対象:小学生(Zoom参加)

|申込:7月24日(水)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.riken.jp/pr/events/events/20240806_1/index.html

 

科学講演会2024~研究者の“わくわく”が未来を紡ぐ~ 「AIでひらく未来への扉」

理化学研究所が年に一度開催している科学講演会。2024年度のテーマは「AIでひらく未来への扉」で、AIが子どもの脳の発達に与える影響などについて日本化学未来館で講演が行われます(ライブ配信あり)。15分の質問タイムがあり、研究者に直接質問することも可能。

 

|開催日:8月24日(土)

|対象:中学生以上

|申込:7月24日(水)まで

 

●詳細はこちら!

https://www.riken.jp/pr/events/events/20240824/index.html

 

***

 

この夏、全国の大学や研究機関で行われる小学生から高校生向けのプログラムを中心にご紹介しました。気になるイベントは見つかったでしょうか?(ちなみに筆者は「謎の生命体ふよふよ」と「渋滞学」が気になりました)

 

これ以外にも、さまざまな大学で子ども向けイベントが予定されています。ぜひお近くの大学や、オンラインのイベントをチェックしてみてくださいね。

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