考えるよりも感じさせる。
ビジュアルコンシャスなWebマガジン。
日本全国の大学が発行する広報誌を、勝手にレビューしてしまおうというこの企画「大学発広報誌レビュー」。第8回目となる今回は、少し趣向を変えて、津田塾大学のWebマガジン「plum garden」を取り上げます。
津田塾大学は1900年(明治33年)に開校された「女子英学塾」を前身とする女子大学。東京の千駄ヶ谷と小平に2つのキャンパスを有しています。学部は学芸学部のみの1学部体制で、英文学科、国際関係学科、数学科、情報科学科の4学科が設置されています。
今回ご紹介する「plum garden」は、紙媒体の広報誌ではなくWebマガジンです。Blog形式の記事をCMSで積み上げていく形で構成されており、それぞれの記事は以下の3つの方法で抽出をかけることができます。
1.「ひと」「まなび」「キャンパス」「イベント」の4つの切り口で抽出
2.「授業」「歴史」「数学科」など、埋め込まれたタグで抽出
3.「わたしと津田塾大学」「津田塾探訪」といった連載別に抽出
タグのみでも良い気はしますが、タグの概念を持たない読者には1と3の抽出方法も必要なのかもしれません。
記事はCMSを使ったブログ形式
「plum garden」が印象的なのは、とにかく写真が美しいこと。2016年現在、Webマガジンはパソコンよりもスマートフォンで読まれること主流です。じっくり読みこむ人もいるでしょうが、どちらかといえばフリックを繰り返しながら「読み流す」人の方が多いでしょう。その際、好意的な印象を残すためには一字一句の文言よりも一瞬で目に飛び込む美麗なビジュアル要素が非常に重要な要素となります。考えるよりもまず、感じさせなくてはいけません。
「plum garden」に掲載されている写真は、一眼レフならではの「ボケ味」を活かした魅力的な写真が多く、十分に及第点以上のクオリティであるといえるでしょう。
それぞれの記事に添えられた写真は本格的
Webマガジンと紙媒体のもっとも大きくちがう点は、動画が使えたり紙面の制限がなくテキストや図版をふんだんに使えるということはもちろんですが、なにより「記事発行のタイミングに制限がない」、そして「部数の制限なく情報をリーチさせることができる」という点だと思います。
紙媒体の広報誌は、多くの大学が年間3〜4回のペースで発行しています。しかしWebマガジンであればひとつの記事が完成した段階でいつでも情報を発信することができます。大学に対する興味・関心を持続させるためには、短いスパンで数多くのネタを届けることが重要です。
また、紙媒体であれば部数を増やせば増やすほどコストがかさんでしまいますが、Webマガジンであれば、どれだけの読者に読まれてもコストは変わりません。つまりページビューが増えれば増えるほどにコストパフォーマンスがよくなるというわけです。
こう書くとあらゆる面でWebマガジンが優秀であるように思えるかもしれませんが、じっくり読みこむ記事を掲載する場合や、来客や訪問の際に大学を紹介するツールとして考えると、やはり紙媒体に軍配を上げざるをえないでしょう。
Webマガジンと紙媒体。今後多くの大学が両者を併用することになるでしょう。どちらが優れているわけでなく、それぞれの特徴を活かした展開が求められることは言うまでもありません。