全国の大学が発行する広報誌をレビューする「大学広報誌レビュー」。今回とりあげるのは、上智大学が発行する『Vox Sophia』です。
上智大学は1913年に設立された私立大学で、またの名を「Sophia University」ともいいます。「Sophia」とは、ギリシャ語の「最上の叡智(ΣΟΦΙΑ)」という意味から名付けられたのだそう。キリスト教の理念に基づく人間教育を重視していて、9学部29学科すべてが一つのキャンパスに集約されている点も特徴です。英語をはじめとする多様な言語教育と世界中の大学との充実した留学制度により、グローバルな視野を持つ人材を育成しています。
そんな上智大学の広報誌が、約50年の歴史を経て、2025年8月より『Vox Sophia』として新創刊されました。

左がリニューアル前(2025年3月24日発行号)、右がリニューアル後(2025年8月発行号)
以前の広報誌『上智大学通信』は年7回の発行で、在学生・教職員・保護者といった大学コミュニティに向けた情報提供が中心でした。内容は、イベント報告や制度の紹介、入試や卒業に関する案内など、大学の最新情報を網羅するスタイル。日本語を基本とし、紙やPDFで配布されてきました。

ニュースが充実
一方、新広報誌『Vox Sophia』は年2回(夏・冬)の発行に変更。速報性よりも、テーマごとの特集記事や読み応えのある誌面を重視して刷新されています。日本語と英語の二言語表記を採用し、国際性を全面に押し出している点も印象的です。

写真を大きく扱うなど、デザインも大きく異なります
また、情報提供にとどまらず、鼎談や留学後記などの多彩な連載企画を取り入れ、人物や研究のストーリーを掘り下げる企画も盛り込まれています。

今号では、3人の学生が新入生を支える「ヘルパー制度」について語っています

語学留学を経験した学生のインタビューを掲載
その道のプロフェッショナルが研究分野を解説する「Professor’s Insights」では、読み応え抜群のインタビュー記事を掲載。今号は、火災から復興したノートル=ダム大聖堂の実地調査に携わった板野正則教授にお話を伺っています。

左に日本語表記、右に英語表記。すっきりしたデザインです
大学の公式サイトではタイトルの『Vox Sophia』についてこのように書かれています。
Vox Sophiaとは:
「Vox」はラテン語で「声」を意味し、「Sophia」はギリシャ語で「叡智」を表します。この二つの言葉を組み合わせ、「Vox Sophia=ソフィアの声」という意味を持つ造語として名付けられました。
多様な人々の声を、広報誌を通して知る――今回の大幅リニューアルには、そんな思いが込められていそうです。
デジタル公開で広がる読者層
配布を電子ブック形式での公開に切り替えているのも、大きな変更点です。これにより、国内外の幅広い読者がパソコンやスマートフォンから気軽にアクセスできるようになります。二言語表記の採用と合わせて、さらに大学の理念や活動を多くの人に知ってもらえる機会が増えそうです。

パソコンで表示される画面
従来の「お知らせ中心」から、読者が大学の理念や活動のリアルを感じられる「ストーリーテリング型」へ。大学の声をどう届けるか――その問いに、ひとつの答えを示したのが『Vox Sophia』なのかもしれません。これからどのように展開されていくのか、今後に期待が高まります。
ちなみに個人的に注目しているのは、毎号、国旗のカラーをデザインのアクセントに採用する遊び心のある試み。今号は留学後記の留学先・ドイツの国旗の色を取り入れたとのことで、次号はどんな国旗になるのか楽しみです。