「わあ!」と思わず感嘆の声をあげそうになった本がある。なんと3.5×3.5mmの洋書が展示されていたのだ。正に米粒のように小さい名古屋大学附属図書館最小の蔵書である。訪れたのは特別展示「名大図書館No.1」。今回は読書家もそうでない方も楽しめるこの展示会をご紹介したい。
名古屋大学附属図書館は、蔵書数約320万冊をほこる学びの拠点。緑葉が繁茂するキャンパスの木立を抜けると、カフェが併設された白壁のスタイリッシュな姿を目にすることができる。
図書館前。学生たちの笑い声や討議の声が聞こえてくる
今回の展示会、大学の所蔵資料だから高尚なものなのでは?私に理解できるかな…と期待と不安を胸に会場に入ると、そこには遊び心あふれる“認定証”と共に、図書館の「○○No.1」が展示されていた!
ユニークなものでは「持ちやすい資料No.1」として認定された持ち手つきの資料。
世界でも珍しい持ち手つきの本。名大図書館ではこの1冊のみ
タイトルも『誰かに先を越された広告』と興味をそそる。風景に手を加えたり、活用することで注目を集めるゲリラ広告をカラー図版で紹介した本で、この本自体も狙ってこんな形にしたらしい。「こんなの初めて!」と誰かに話したくなること間違いなしだ。
思わず「わあ!可愛い」とにっこりしてしまうのは「いちばん小さい和書」として認定を受けた「こつう豆本」だ。9×7cmの小ぶりな本はそれぞれに色とりどりの装丁が施され、目が釘付けになってしまう。この本は、江戸時代後期に婦女子の娯楽用として作られ始めたもの。かつては袖珍本(しゅうちんぼん)とも呼ばれ、袖に収まるほどの豆本という意味だ。現在でも収集している愛好家がいるほど人気が高い。
豆本のコレクション。日本古書通信社が発行し「こつう豆本」と呼ばれる
また、冒頭に登場した米粒級の「いちばん小さい洋書」、実は聖書である。1965年に凸版印刷株式会社が発刊した。すべて手作業で製作されたらしく、印刷技術の発達や日本人の手先の器用さに感心する書物だ。
「一目見てわかる物を展示したかった」と話すのは、この企画を担当した名古屋大学附属図書館情報サービス課の伊原尚子さん。たしかにここに展示されている資料のどれもが、一瞬にして来場者の目を奪う。「知らなければ、なかなか目につかないものをイチバンと名付け、楽しめる切り口にした」と言う伊原さん。展示の仕方も誰にでも分るようにと工夫されており、子供から大人まで楽しく過ごすことができる。
こちらは「歴史ロマンNo.1」の古銭宝鑑集。本物の古銭が結わえてある
最後にぜひ紹介したい資料がある。ノーベル賞受賞者5名による博士論文の「原本」だ。5点の論文、これは「日本でいちばん多い」所蔵の数である。日本有数の実力をもつ名古屋大学ならではの資料といえる。
青色発光ダイオード(LED)の開発で、2014年話題となった赤﨑勇氏の博士論文(1964年)
2008年物理学賞を受賞した益川敏英氏の博士論文(1967年)
このような貴重な資料に出会える図書館主催の展示会は、定期的に開催されているのでぜひ足を運んでほしい。学術資料だけじゃない大学図書館の魅力が再発見できるはずだ。