人生100年も現実となってきた超高齢化社会の日本。ただ長生きするのではなく、いつまでも健康で豊かな人生を過ごしたいですよね。武庫川女子大学 国際健康開発研究所では、健康長寿のためには正しい食生活が欠かせないとの考えのもと、さまざまな研究活動、情報発信、食育の実践活動などを行っています。研究所内のHealthy+は一般公募によるスタッフも参加し、理想的な食生活をめざして食の教育を広める活動をするグループです。今回は、Healthy+主催の特別食育講座『食べて! 歌って! Enjoy食育』が開催されるということで、会場にお邪魔してきました。
会場の武庫川女子大学甲子園会館
会場は、NHK朝ドラ「まんぷく」の舞台として有名になった、武庫川女子大学甲子園会館です。会場には60名ほどの参加者。当初40名の参加者を募集したところ、希望者多数のために急遽60名まで増員したとのこと。健康的な食事について知りたいという人はたくさんいるようです!
素敵な雰囲気の建物内観
長寿地域の食生活ってどんなもの?世界での研究活動で分かったこと。
講座は、研究所所長 家森幸男先生の講義『世界に学ぶ! 食べ方上手』からスタート。世界で長寿を誇る地域の食生活を調べた研究結果から、健康長寿のためのヒントが得られるお話です。
国際健康開発研究所の所長 家森幸男先生
とくに興味深かったのは、100歳以上の高齢者の割合が高く、世界一の長寿地域と言われたこともある沖縄から移住した人が多かった、ハワイ・ヒロとブラジル・カンポグランデを調査した事例です。「ハワイ・ヒロが沖縄を超える平均寿命で世界有数の長寿地域となったのに比べ、ブラジル・カンポグランデは日本の平均寿命より17年も短命である」という驚きの結果が出たそうです。この2つの地域の差は、食生活。ハワイ・ヒロの場合、「蒸し料理中心で食塩摂取量は沖縄の半分に近く、大豆や魚、果物を豊富に食べ、脳卒中や心臓死が少なかった」といいます。一方のブラジル・カンポグランデは「肉料理に偏った食事によって塩分・脂肪過多であり、沖縄食文化のひとつである魚介・大豆の摂取頻度もかなり低く、生活習慣病の割合が高くなっている」ことが分かりました。食生活の変化が寿命に大きな影響を与え得ることがよく分かる事例ですね。
ヨーグルト効果で健康長寿を実現するヨーロッパの村
また、100歳超えの長寿者が多く住むというヨーロッパのグルジアの村の食生活も紹介されました。この地域の食生活での一番の注目ポイントは、毎日、どんぶり一杯ほどのヨーグルトを食べていること。「ヨーグルトは、カルシウム、マグネシウム、カリウムを豊富に含みます。日本の免疫力が低下した高齢者が毎日ヨーグルトを食べると、インフルエンザの抗体値が上がったという研究結果から、免疫力強化に効果があることが分かっています。また、マグネシウムは血管細胞のイオン・バランスを整えてくれる効果があり、生活習慣病のリスクを下げますが、日本人のマグネシウム摂取量は摂取推奨量を満たしていないのが現状です」といいます。
食育の5つのポイントとは
Healthy+が掲げる食育の5つのポイントは、①食事バランス、②適塩、③適脂、④多菜、⑤マグネシウムを豊富に含む食材の摂取。マグネシウムを豊富に含む食材については、「“まごわやさしいヨ”と憶えてください」と、家森先生。“ま=まめ(大豆)、ご=ごま(種実)、わ=わかめ(海藻)、や=やさい(野菜)、さ=さかな(魚介)、し=しいたけ(きのこ)、い=いも、ヨ=ヨーグルト”の摂取をお勧めされていました。しっかりした研究結果に基づいたお話を聞くと、食生活についてきちんと考えないといけないな、という気持ちになりました。
豊富な食材が使われた適塩ランチを実食!
講演が終わればちょうどお昼時。皆さんお待ちかねの健康ランチです。
健康ランチ
メニューは以下のものになります。
主食:おやこ大豆の混ぜごはん
主菜:鯛のトマト甘酢ソース
副菜:野菜ときのこのカレー炒め、海の幸・山の幸!乾物と根菜の煮物、野菜たっぷり洋風みそ汁
デザート:紅茶のキウイ・ぶどう寒天
献立を考えたのは、食育についての知識をHealthy+で学んだ“食育先生”というグループ。大学生から大人の方までバラエティに富んだメンバーが登場し、みんなで「いただきます!」。食育先生が解説をしてくれる献立のポイントを聞きながら、食事タイムの始まりです。
“食育先生”のみなさん
まず驚いたのは、一食の食塩相当量がわずか2.3gしかないのに、物足りない味だと感じないこと! まわりの参加者からも、「塩が少ないのに薄くなくて、おいしいね」という感想が聞こえてきます。素材の味がしっかり活かされ、カレーや甘酢がほどよいアクセントとなり、いつもより薄味でも充分においしくいただけます。普段の食事ではずいぶん濃い味に慣れ過ぎているんだな、と反省…。
そして、いろんな種類の食材が使われており、とても栄養バランスの良い食事です。「うちの食事にはきのこや海藻が足りないかな」「野菜をもっと摂らないとね」と、参加者の皆さんは食べながら自身のいつもの食卓を振り返っている様子。実際に食べてみることで、理想の食生活がどんなものか実感できます。
レシピを教えてもらえたので、「おいしいから家で作ってみよう」と話している参加者も。これだけ多彩な献立を毎日の食卓に用意するのは難しいかもしれないけれど、少しでも意識するきっかけになりそう。本日の献立にはない他のメニューが載ったレシピ集も配られたので、ぜひ実際に作ってみたいですね!
栄養バランスの良い料理のレシピ集
楽しく学んで、食生活を見直すきっかけに。
食後は、食育に関する知識が楽しく学べるクイズ大会です。クイズの成績によってお土産にもらえる品物が選べるということで、盛り上がる参加者たち。
さらに、武庫川女子大学の音楽学科有志による『浜甲カンタービレ』がイベントに華を添えてくれます。「まんぷく」主題歌のコーラスを聞かせてくれたほか、参加者も一緒に美しい音色のトーンチャイムを演奏したり、なごやかなひと時が過ごせました。
浜甲カンタービレのみなさん
参加者もトーンチャイムで演奏に加わった
最後に、Healthy+代表であり、東海大学健康学部の准教授でもある森真理先生から、「今日学んだことを一つでもいいから誰かに伝えてください。それが健康長寿のための食育活動を広めることにつながります」と閉会の挨拶。森先生の「健康は人任せにしない」という言葉が心に残り、このイベントで教わったことを参考にして自身の食生活を見直してみようという気持ちになりました。
Healthy+代表、東海大学健康学部准教授の森真理先生
お土産