ほとんど0円大学 おとなも大学を使っっちゃおう

  • date:2017.5.19
  • author:南 ゆかり

立命館大学のグローバル人材育成広告キャンペーン「RPG」のインパクトがすごい。(前編)

大学の広告、どれも同じように見えていないだろうか?しかし最近、ひと味違うものが増えている。そのビジュアルやメッセージから、大学の面白さや特色を紐解いてみたい。

今回取り上げるのは、立命館大学の「RPG (RITSUMEIKAN PROJECT IN GLOBALIZATION) 」と銘打ったキャンペーン広告。大学広告の従来のイメージを打ち破るような鮮烈なビジュアルと、「世界とまみれて、世界を変える。」というメッセージが若い世代の心をつかんでいる。その理由やインパクトの大きさを取材してみた。前後編に分けてお送りする。(メイン画像:Illustration by Takashi Konno)

 


タダ者ではない「RPG

立命館大学は、1988年に日本初の国際関係学部を創設して国際的な学びを強化してきた歴史を持ち、文科省のSGU(スーパーグローバル大学) 37大学にも選出されるグローバル教育に強い大学の一つ。その特色を鮮明に打ち出すこれまでにないキャンペーンをと、広報担当者たちは、以前から検討を重ねてきたという。

 

 「従来の国際教育の広告イメージを打ち破り、若者の心に何かしら引っかかるような表現」を求めて試行錯誤の末に生まれたのが「RPG(RITSUMEIKAN PROJECT IN GLOBALIZATION)」シリーズだ。

 

 第1弾は、2016年3月、古い羊皮紙に描かれた古地図とも古文書とも見えるデザインをメインビジュアルにした「Quest.1」というタイトルの新聞全面広告。ところどころ外国語表記に変わっている暗号文書のような体裁で語られるメッセージは、立命館大学と関係の深い提携校や留学先約20か国の言語で記述されているという。

 

 

RPG広告第1弾「Quest.1」(読売新聞2016年3月31日付)

RPG広告第1弾「Quest.1」(読売新聞2016年3月31日付)

 

「この冒険は決してスマートではない」「多様性という名のダンジョンで迷い、現実という名のモンスターと格闘し」「いよいよ始まる新たな挑戦」といった言葉が並び、同大学の外国語教育プログラムとはいったいどんな内容なのかと、知りたくなる仕掛けになっている。気になるのが、「世界と、まみれよう。」というキャッチコピー。広告コピーではあまり使わない「まみれる」という言葉がタダ者ではない印象を与えている。

 

 「立命館大学のグローバル教育は、冒険であり挑戦なのだ」と、若い世代なら一瞬で“感じて”しまう仕掛けがRPGゲームの世界観。ゲームという共通語をうまく活用している。

 

見た瞬間にかっこいい

 「Quest.1」を予告編とすれば、本編は半年後の同年10月初旬にスタートした。インターネット上に「RPG」特設サイトをオープンし、具体的なグローバル教育プログラムを紹介している。

 

 少し時間を置いて10月末から11月にかけ、関西地域ではJR・私鉄5社・大阪市営地下鉄の交通広告として「エスノセントリズム」「超次元の双塔」「エクスポータビリティ」「多民族パーティ」という4種類をシリーズとして展開した。

 

 それぞれ、「国際教養科目」「D・U・D・P(立命館大学と海外の大学、2大学の学位を4~5年間で修得するプログラム)」「国際PBL(課題解決型教育)によるイノベータ育成プログラム」「キャンパスアジア・プログラム(中国、韓国、日本の学生が4年間でそれぞれのキャンパスを移動しながら学ぶプログラム)」に対応して、その内容・ねらいをイメージ化したものだ。

 

「国際教養科目」を表現した「エスノセントリズム(自文化中心主義)」/Illustration by Akagi

「国際教養科目」を表現した「エスノセントリズム(自文化中心主義)」/Illustration by Akagi

 

「D・U・D・P」を表現した「超次元の双塔」/Illustration by HR-FM

「D・U・D・P」を表現した「超次元の双塔」/Illustration by HR-FM

 

「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」を表現した「エクスポータビリティ」/Illustration by Foo Midori

「国際PBLによるイノベータ育成プログラム」を表現した「エクスポータビリティ」/Illustration by Foo Midori

 

「キャンパスアジア・プログラム」を表現した「多民族パーティ」/Illustration by Shishizaru

「キャンパスアジア・プログラム」を表現した「多民族パーティ」/Illustration by Shishizaru

 

さらに12月には、全国紙の全面広告として、本編のイントロでもあり総まとめともいえる部分、「船出」を掲出している。

 

 実際の広告を見てもらえばわかるのだが、大学広告とは思えない突き抜け感はさらに加速しており、パッと見るとまるでゲームの広告のよう。濃密なイラストと「世界とまみれて、世界を変える。」というキャッチコピーで、一緒に冒険の旅に出た仲間たちが数々の挑戦の中で成長していくストーリーに乗せて立命館大学のグローバル教育プログラムのねらいが語られている。

RPG広告「船出」(読売新聞2016年12月23日付)/Illustration by Takashi Konno

RPG広告「船出」(読売新聞2016年12月23日付)/Illustration by Takashi Konno

 

著名なトップイラストレーターに依頼したイラストはとても完成度が高く、一瞬でその世界に連れて行ってくれる。Web調査や、高校生・在学生を対象に広告への印象を聞いた調査では、「ワクワクする」「見た瞬間にかっこいいと思った」「新しい未知の世界が表現され、シンプルにかっこいいし興味が湧く」などの高評価が多かったという。

 

「高校生、大学生世代には、ゲームの世界に対して一定の理解があります。未知の世界に飛び出し経験を通じて成長するという意味で共通しているので、そのイメージを留学などのグローバル教育プログラムにあてはめて理解してくれるようです」(広報課・桜井真純さん)

 

どのイラストが好きか、その理由も併せて聞いた回答に、その理解の度合いが表れている。たとえば「超次元の双塔」のイラストへの感想として、「『己の成長に挑め』の一言に感銘を受けた」「挑戦、というのがかっこいい」「描かれている時計が時間の少なさを感じさせる」「日本やアジアの龍と西洋のドラゴンが描かれているのがいい」「いかにも試練という感じが出て、そこに挑戦を感じられる」などなど。かなり深いところまでメッセージを読み取っている。これが、ゲームという共通言語の威力なのだろう。

 

イメージ色の強い広告が先行しがちだが、「RPG」で表現される各プログラムのリアルな内容については、TV番組(BSジャパン「真・大航海時代 ~グローバル人材が社会を変える~」2017年2月4日放送)やオンラインビジネス誌インタビュー記事などでも紹介されている。TV番組については、「RPG」特設サイトに編集映像へのリンクが掲載されているので、興味を持たれた方はぜひ見てほしい(2018年1月末まで視聴可)。

 

この続きは後編にて、メッセージ「世界とまみれて、世界を変える。」という言葉の真意とは?そして骸骨のイラストが印象的なシリーズ第2弾「エスノセントリズム(自文化中心主義)」などについてお伝えする。

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