今回お伝えするのは、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター7階の「展観ギャラリー」。このギャラリーでは主に日本音楽に関する資料や研究成果を展示しているのですが、なにやらおもしろい展示が多いと耳に挟んだので早速見に行ってきました!なお、今回お伝えするのは、「伝統芸能×マンガ」(展示終了)と「三味線に関するプロダクトデザインからの考察-人と道具との新たな関係の構築を目指して-」(2018年12月上旬~2019年2月末まで展示)の2点です!
「伝統芸能×マンガ」の世界
まず、ご紹介したいのは伝統芸能とマンガの展示です。伝統芸能とマンガ…?と思う人も多いと思いますが、実は密かなブームが起きているんです!
伝統芸能といえば、能・歌舞伎・箏曲・津軽三味線といった、いわゆる純邦楽や民俗芸能と言われるジャンルですが、実はこれらを題材にしたマンガが多く出版されています。
展示スペースにはマンガの表紙と楽器を展示。手前の楽器が津軽三味線、その隣に胡弓が展示されています。
展示された中で気になったのはこの作品、『この音とまれ!』(アミュー/集英社)。2012年から月刊漫画雑誌『ジャンプSQ』で連載されているこのマンガは、廃部寸前の高校の箏曲部を立て直し、コンクールを目指すという物語です。関係のある楽器は箏(こと)。不良少年や家元の令嬢など個性豊かな登場人物が奏でる描写は必見です。他にも和楽器ガールズバンドをめざす『なでしこドレミソラ』(みやびあきの/芳文社)や津軽三味線を題材にした『ましろのおと』(羅川真里茂/講談社)など伝統芸能に関連した漫画作品を展示していました。
『この音とまれ!』のコーナーでは箏も展示されていました。この作品で登場するオリジナル曲「龍星群」は、楽譜が公開され、コンクールも開催されたとか。作中の楽曲を集めたCDも発売されており、図書室の閲覧室で視聴可能です!
図書室では、マンガやCDだけでなく、貴重な書物・音源も閲覧・視聴可能。職員さんに相談してみるのもいいかも。
こちらは、展観ギャラリーのマンガ。マンガで使われる音楽を集めたCDがあるなんて驚きですね。
機能もデザインもいいとこ取り、究極の三味線!
さて現在展示されているのは、昨年12月上旬より始まった「三味線に関するプロダクトデザインからの考察-人と道具との新たな関係の構築を目指して-」です。この展示は、美術研究科博士課程の村井さんが考案した三味線を展示したものです。
この展示を行った村井さんは、京都芸大で初めて三味線に触ったとのこと。大学の常磐津部(「常磐津」(ときわづ)とは、三味線の一派で、部活動があるのは京都芸大だけだそうです!)の活動から、今回の三味線製作のヒントを得たようです。3点のオリジナル三味線と、製作過程の三味線をいくつか展示していました。
こちらは、現代のインテリアに合うように意匠を凝らした作品。一般的な三味線は天然の木や動物の皮が使われるところ、合板やカーボン素材といった人工物を使用して製作されました。
こちらは、従来の三味線より細かく分解できるモデル。すべてのパーツを収納すると、なんとゆうパック60のサイズ(ティッシュ箱程度の大きさ)に収まるんだとか。※現在は展示終了
村井さんは展示資料の解説パネルの中で、日本伝統音楽が若者にもっと身近に感じられるようになるにはどうすれば良いか考えたところ、現代の若者の感性に響くデザインの三味線を作るという着想に至ったそうです。たしかに、おしゃれでお手入れも簡単な三味線なら、ちょっとほしいな…と思いました。
こちらは、6歳の子ども用三味線(伝統芸能の世界では6歳の6月6日に稽古を始めるのが良いとされている)。西洋の楽器では子ども用があるが、和楽器はないそうで、子どもの使いやすい少し小ぶりな三味線を作ったそうです。
子ども用三味線には、音程を調節する部分に、ギターのペグを使用。三味線らしいデザインを残しつつ音が狂いにくいように改良しています。
日本伝統芸能や音楽に関する最新の研究成果や他では見ることのできないマニアックな展示を行う、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター展観ギャラリー。これを機に見てみたい!って思われた人は、ホームページでご確認のうえ、ぜひ行ってみてください!